キンドリル、生成AIでメインフレーム刷新を加速 Google Cloudとの連携を強化

2025年4月15日、米ITサービス大手のキンドリルは、Google Cloudとの戦略的パートナーシップを拡大したことを日本で発表した。
米国では先行して3月27日に発表されていた。
生成AIを用いたメインフレームの近代化を主軸に、企業のクラウド移行とDX推進を支援する取り組みを推進している。
メインフレームの変革を支えるAI活用と両社の補完関係
メインフレームは現在も多くの企業において基幹システムとして稼働しているが、老朽化や運用人材の不足が深刻化している。
こうした課題に対応するため、キンドリルとGoogle Cloudは協業体制を強化し、AIによる変革を推進する構えを見せた。
キンドリルは今回、Google CloudのAIおよびGeminiモデルに関する「スペシャライゼーションパートナー」に認定されており、これは専門性を有する企業としてGoogleから公式に認められたことを意味する。
両社のパートナーシップの中核には、生成AIの実装によるメインフレームアプリケーションの現代化がある。
Google Cloudが提供する生成AIモデル「Gemini」によるコード分析やアプリのリライト支援などの技術と、キンドリルが長年培ってきたメインフレーム領域のノウハウが融合することで、既存のシステムをスムーズかつ段階的にクラウドへと移行することが可能になる。
両社が打ち出した「Gen AI Accelerator Program」というプログラムでは、事前のコミットメントなしで現状のアセスメントが可能になる。
導入企業は自社のアプリケーションやデータがどのようにモダナイズされ得るかを、段階的に把握できるよう設計されているという。
すでに実証事例として、大手保険会社でのCOBOLからJavaへの変換やGoogle Distributed Cloudへの移行が実施され、スキル継承や規制要件への対応といった成果も報告されている。
今後のクラウド移行市場への影響
キンドリルとGoogle Cloudの連携強化は、レガシーITの象徴とも言えるメインフレーム領域において、生成AIを活用した近代化を加速させるだろう。
最大のメリットは、移行負荷の軽減と属人性の解消につなげられる点だろう。
生成AIがコード変換や構造解析を担うことで、従来は数年単位を要していたCOBOLなどの移行プロジェクトが、段階的かつ計画的に短縮される可能性が高まっている。
一方で、生成AIがリライトを行う際の「精度」や「信頼性」には限界があり、完全な自動移行は現実的ではない。
変換後のコードの検証工数は依然として人手を要する部分が多く、過度な期待はリスクを生むだろう。
今後、同様の取り組みが他業界にも波及すれば、レガシーシステムに依存してきた企業ほどクラウド移行の必要性が高まり、AIによる近代化の導入が標準となる可能性がある。
特に、保守性と規制順守の両立を求められる金融・保険・製造業界では、クラウドとAIの融合によるシステム刷新が不可避の選択肢として浮上してくるだろう。