生成AIで制作したわいせつポスターを販売した男女4人が逮捕 日本初の摘発が突きつけるAI時代の倫理と法の課題

生成AIを使って制作したわいせつな画像をインターネット上で販売したとして、男女4人が警察に逮捕されたことが、2025年4月15日に明らかになった。
日本国内で初めて逮捕者を出した事件となり、急速に進化する生成AI技術と現行の法律との間に横たわるギャップを浮き彫りにしている。
AIが生み出した「裸の女性」のポスター販売、全国初の摘発に
捜査関係者の発表によると、今回の事件は、生成AIを使って裸の女性を模したわいせつな画像を制作し、それをポスターとして2024年10月にECサイト上で販売したというものだ。
逮捕されたのは、愛知県北名古屋市で小売業を営む男など、男女計4人である。
今回使用された生成AIは、高度な画像生成技術を備えたオープンソースのモデルとされており、個人でもPC上で容易に扱えるタイプのものだった。ネット上の投稿によって販売サイトが発見され、通報が警察に寄せられたことがきっかけで調査が始まった。
この事件には、技術の悪用という側面とともに、法律の適用範囲が改めて問われる状況がある。日本の刑法第175条では、「わいせつな文書、図画その他の物」を頒布・販売することを禁じており、違反すれば最大で懲役2年の刑罰が科される。
今回のケースは、生成AIが作成した“実在しない人物”の画像であるにもかかわらず、この法律が適用されたことで注目を集めた。
警察は「実在するかどうかは関係なく、明らかにわいせつ性を帯びた表現であれば対象になる」と説明している。
AIコンテンツ規制の布石か 技術進化と倫理の綱引きが始まる
この事件は、AI技術が進化し一般化する中で、誰もが簡単に「リアルな非実在コンテンツ」を生成・拡散できる現代のリスクを浮き彫りにしている。
問題の焦点は、「生成物が物理的な存在でなくても、社会的・倫理的に有害である」と判断された場合に、どのように取り締まり、予防策を講じるかという点だろう。
政府は現在、AI関連技術に対する法整備を進めているが、こうしたわいせつ物やディープフェイク(※)といった“悪用例”に特化した法的対応はまだ追いついていない。
今後、関連法の改正や新法の制定に向けた議論が活発化する可能性がある。
マーケティングやクリエイティブ領域において、生成AIはすでに有用なツールとして定着しているが、その一方で「誰が責任を持つのか」「どの範囲で自由が許容されるのか」といった問題は、業界全体に突きつけられている。今回の摘発は、その境界線を見直す契機になりうるだろう。
※ディープフェイクとは:
AIを用いて他人の顔や声を別の人物に合成し、本物と見分けがつかないコンテンツを作る技術。悪用された場合、名誉毀損や詐欺などの被害を引き起こす危険性がある。