学費支払いにBTC採用 英国教育に広がる暗号資産の可能性

2025年4月11日、スコットランドの名門私立校ローモンドスクールが、英国で初めて授業料の支払い手段としてビットコイン(BTC)を採用することが報じられた。新学期となる同年秋からの運用が予定されており、暗号資産と教育の融合が注目を集めている。
ローモンドスクールが示した教育と金融の新たな接点 BTC導入の背景とその狙い
導入の背景には、「健全な貨幣の原則」を掲げるオーストリア経済学派(※)の思想がある。ローモンドスクールはこの原則をカリキュラムに統合し、不確実な時代を生き抜くための実践的な知識を生徒に提供する姿勢を明確にした。
貨幣の価値や仕組みをリアルに体感できる教材として、ビットコインは最適だという見方だ。
さらに、学校側はビットコインの導入を「教育の民主化」とも位置づけている。銀行インフラが整っていない発展途上国でもアクセス可能なBTCは、教育機会を地理的・経済的な制限から解き放つ可能性を秘めているという。これにより、ローモンドスクールはグローバルな教育の拡張性を追求する意志を示している。
加えて、経済学やコンピュータ科学、倫理、イノベーションといった複数の分野において、ビットコインは「実世界のケーススタディ」として機能する。ブロックチェーン技術の基礎を学ぶ導入教材としても優れており、実践的な学びの入り口となっている。
現在の運用方針としては、授業料として受け取ったビットコインは即座に法定通貨へ変換される。また、現時点では他の暗号通貨の受け入れ予定はなく、今後は保護者やコミュニティの意見をもとにBTCベースの財務構築も検討される見通しだ。
拡大するビットコイン教育の波と今後の展望
暗号資産を教育現場に取り入れる流れは既にグローバルに展開している。
その代表例として2022年のシンシナティ大学における暗号通貨講座の開始や、2023年のエルサルバドル教育省との提携によるBTCカリキュラムの導入が挙げられる。
さらに2024年には米国ワイオミング大学がビットコイン研究所を設立し、2025年にはオースティン大学がBTCへの直接投資に踏み切った。こうした教育の文脈で暗号資産を扱う動きは、技術理解の深化だけでなく、金融リテラシーやグローバル経済への感度を高めるうえでも重要な役割を果たし始めていると言える。
一方で、ビットコインの価格変動リスクに対する懸念も存在する。ローモンドスクールは即時換金の方式を採用しているが、それでも暗号通貨の変動による影響を完全に排除することは難しい。
また、各国の法律や規制がまだ不十分であり、ビットコインの法的立場が確立されていない状況では、導入に伴うリスクや予期せぬ障害が発生する可能性がある。
教育における暗号資産の導入は、単なる決済手段の更新ではなく、教育の構造や哲学そのものに対する再設計の契機であると言える。成功すれば、教育×金融の新しい標準が築かれることになるだろう。
※オーストリア経済学派:政府による通貨供給や市場介入を最小限にすべきとする自由市場志向の経済学派。通貨の健全性や個人の経済的自由を重視するのが特徴。