中国エンボディドAI企業「TARS」、設立2カ月で約180億円を調達

中国のエンボディドAIスタートアップ「它石智航(TARS)」が、設立からわずか2カ月で1億2000万ドル(約180億円)の資金調達をしたと2025年4月12日に報道された。
製品は未発表ながらも、同社の技術力と創業メンバーの実績が投資家の信頼を集めている。
製品未発表でも巨額調達を実現した背景
この調達額は、中国のエンボディドAI(※)企業によるエンジェルラウンドとしては過去最高とされている。
主導投資家には藍馳創投(BlueRun Ventures)と啓明創投(Qiming Venture Partners)が名を連ね、線性資本(Linear Venture)や高瓴創投(GL Ventures)も参加した。
調達資金は、製品・技術開発や大規模言語モデル(LLM)のトレーニングに充てられる予定だ。
同社の強みは、ソフトウェアとハードウェアの統合によるAIロボットの開発能力にある。
具体的には、賢い「頭脳」と自在に動ける「身体」を持つAIロボットの実現を目指しており、安定性と信頼性を兼ね備えた製品化が期待されている。
創業メンバーの経歴も注目されており、CEOの陳亦倫博士は清華大学の智能産業研究院でAIロボット分野のチーフサイエンティストを務め、ファーウェイの自動運転部門のCTOやDJIのマシンビジョン部門のチーフエンジニアを歴任した。
また、チーフサイエンティストの丁文超氏は、ファーウェイの「天才少年」プログラムに選ばれ、AIによる自動運転技術の意思決定ネットワークを構築した経験を持つ。
今後の展望
「TARS」は、創業メンバーの豊富な経験と技術力が評価されており、製品未発表ながらも将来性への期待が高まっている。
エンボディドAI市場は急成長中で、多くの企業が参入しているが、同社のように短期間で巨額の資金を調達する例は稀である。
「TARS」のような企業が短期間で巨額の資金調達を実現している背景には、AI技術の進化と市場の需要増加がある。
今後、同社が具体的な製品を市場に投入することで、エンボディドAI分野における競争が一層激化する可能性がある。
また、中国政府の積極的な支援と投資家の関心の高まりにより、AI関連企業への資金流入が加速している。
特に、国家主導の投資ファンドや大手テクノロジー企業がAIスタートアップへの投資を強化しており、これが市場全体の成長を後押ししている。このような環境下で、エンボディドAI技術の商用化と産業応用が進展し、関連企業の競争力がさらに高まると考えられる。
総じて、中国のエンボディドAI市場は、技術革新と政策支援を背景に、今後も高い成長が期待される。
「TARS」のような先進的な企業が市場をリードし、新たな価値を創出していくことが予想される。
※エンボディドAI:物理的な身体を持つAI技術であり、ロボットが環境に適応しながら学習する能力を持つ。この技術は、ロボティクスや自動運転などの分野で活用されている。