Google、オンプレミス型クラウド「Google Distributed Cloud」にGeminiとAgentspaceを導入

米Googleは2025年4月9日(米国時間)、「Google Distributed Cloud(GDC)」において、生成AIモデル「Gemini」とAIエージェント「Agentspace」が利用可能になると発表した。
企業が自社内に設置した専用ハードウェアでAIを活用できるオンプレミス型クラウド(※1)に進化することで、データセキュリティやパフォーマンス重視のビジネスニーズに応える大きな一手となりそうだ。
Googleの新たなクラウド戦略
Googleが発表した新機能の要点は、クラウドに頼らず企業内でAIを活用できる環境を整えることだ。
Google Distributed Cloudは、企業のオンプレミスやエッジ環境に専用ハードウェアを設置し、Google Cloudの機能をローカルで使えるようにする仕組みである。
今回のアップデートでは、生成AI「Gemini」がGDC上で動作するようになった。
Geminiは、NVIDIAのGPUやDell、HPEのサーバーなどに最適化されており、自社データセンターで安全にAIを運用したい企業にとって有力な選択肢となる。
情報漏洩や遅延を避けたい医療や金融、防衛分野では、オンプレミス運用が現実的とされる。クラウドへの接続が不要な点も、セキュリティポリシーとの整合をとりやすくする。
また、Geminiに加え「Google Agentspace」のGDC対応にも注目だ。
Agentspaceは社内情報を横断的に検索・取得できるAIエージェントであり、クラウドにデータを預ける必要がないため、セキュリティ重視の業界にも適している。
Googleは2025年第3四半期にこれらの機能のパブリックプレビューを開始予定で、今後の普及に向けた重要な一歩となる。
今後の展望
Googleが発表した「Google Distributed Cloud」上での生成AI「Gemini」とAIエージェント「Agentspace」の導入は、企業のAI戦略に新たな展開をもたらすと見られる。
特に、厳しいセキュリティ要件を持つ業界にとって、オンプレミス環境でAIを活用できる点は大きな前進だ。
Geminiを使えば、企業はクラウドを介さずに自社データセンター内で高度なAIモデルを動作させられる。これにより、データ移行によるリスクや遅延を抑えつつ、生成AIの利点を享受できる。
さらに、NVIDIAのBlackwellシステムとの統合により、処理性能の向上も見込まれる。
一方、Agentspaceは社内情報へのアクセス性を高め、情報検索や業務効率の改善に貢献するだろう。
自然言語での操作により利便性が高まり、従業員の生産性向上が期待される。
こうした背景から、GDCを活用したオンプレミス型AIの導入は今後拡大すると見込まれる。
企業は柔軟性と制御性を重視しつつ、AI技術を自社環境に取り入れる動きを加速させていく可能性が高い。
※オンプレミス型クラウド:オンプレミス(自社設置)型のIT環境でありながら、クラウドのような拡張性やサービス性を兼ね備えた仕組みを指す。セキュリティや制御性を確保しつつ、クラウド技術の恩恵を享受できる。