トランプ大統領、DeFiへの税務報告義務を撤廃 米国のブロックチェーン業界に追い風

2025年4月10日、米国のトランプ大統領が、分散型金融(DeFi ※)に対する税務報告義務を廃止する法案に署名した。
プライバシー問題をはらんだ内国歳入庁(IRS)の新規則を退け、ブロックチェーン業界の健全な成長を後押しする動きといえる。
DeFiの現実を踏まえた新たな法整備へ
今回トランプ大統領が署名した法案は、IRSが提案していた「DeFiプロジェクトへの税務報告義務」を正式に撤回するものである。
米下院議員のマイク・ケアリー氏(共和党)が提出した本法案は、匿名性や分散性を特徴とするDeFiの技術的性質を踏まえた上で、顧客情報の収集義務が現実的でないことを主張していた。
IRSによる新規則は、ユーザーと直接やり取りをする「フロントエンドサービスプロバイダー」に対して、ユーザー情報の把握・提出を求めるものであった。
しかし、中央管理者が存在しない構造上、これを実施することは極めて困難であり、業界内では過剰規制やプライバシー侵害との批判が相次いでいた。
業界団体であるDeFi教育基金は「この法案は業界にとっての勝利」と評価し、「当面の課題は、DeFi技術が従来の金融システムとどのように異なるかを認識しながら、DeFiのようなソフトウェアツールと、真の金融仲介機関を区別できる法律を整備することに力を入れることだ」とコメントした。
実際、匿名性を前提としたプロトコルが多いDeFiにおいて、画一的な法的枠組みでは対応しきれないケースが多く、イノベーションを殺さないバランスが求められている。
DeFi規制撤廃は再設計の始まり 透明性と匿名性の両立が次なる焦点
今回の決定は、単なる規制撤廃ではなく、「ブロックチェーン技術に適した制度設計を模索する第一歩」と捉えるべきだろう。
技術の進化に対して既存法制度が追いついていないことは、Web3・DeFi分野に限らず広く指摘されてきた。今回の動きは、規制をゼロにすることではなく、“現実を理解した上での再設計”へと舵を切った象徴的な事例である。
一方で、法案撤廃によって生じる規制空白への懸念も根強い。
違法な資金移動やマネーロンダリングの温床になるリスクは依然として残されており、政府側には透明性と自由を両立させる枠組みの構築が求められることになる。
今後は、民間と政府の協働によって「取引の透明性」と「ユーザーの匿名性」をいかに両立させるかが焦点になるだろう。
特定の条件下での限定的な顧客確認や、自主規制団体の整備といった中間解も模索される可能性が高い。
※DeFi(分散型金融):「Decentralized Finance」の略で、ブロックチェーン上に構築された金融システム。銀行などの中央機関を介さず、ユーザー同士で直接取引を行う仕組み。取引所、レンディング、ステーブルコイン発行など多様なサービスがある。