トランプ政権、エヌビディアH20の対中輸出制限を撤回 AI覇権競争で戦略転換か

2025年4月9日、米トランプ政権がエヌビディアのAI向け半導体「H20」に対する対中輸出制限を撤回したことが明らかになった。米公共ラジオ(NPR)が関係者2人の話として報じた。
これは、同社が米国内へのAIインフラ投資を約束した直後の決定であり、米中間の技術競争における重要な動きといえる。
フロリダでの非公式会談を契機に政策転換、エヌビディアの国内投資が鍵
エヌビディアのCEOであるジェンスン・フアン氏は、フロリダ州の大統領私邸マールアラーゴで開催された夕食会に出席したという。同氏はトランプ政権に対し、国内におけるAIデータセンターへの新規投資を確約。これを受け、対中輸出制限の方針が取り下げられたと報じられている。
H20チップは、米国政府による対中輸出規制の枠組み内で合法的に販売可能な最先端AIプロセッサであり、中国企業の間で需要が急増している。
これまでトランプ政権は、国家安全保障上の懸念からH20の対中輸出を制限する方針を検討していた。バイデン政権時代から準備が進められていたこの制限措置は、政権交代後も踏襲されるとみられていた。
しかし、フアン氏が会談の場でAIインフラに対する新たな米国内投資計画を提示したことで情勢が一変した。
トランプ政権はこの提案を受け、国家安全保障とのバランスをとる形で方針を再考したとみられる。結果としてH20の対中輸出制限は撤回されることになった。
AI技術覇権争いの焦点、中国市場と米国内投資のせめぎ合い
今回の輸出制限撤回は、米中間のAI技術覇権を巡る戦略の転換点とも受け取れる。
中国市場では、特に新興企業であるディープシークをはじめとした企業からのH20チップの需要が急増しており、エヌビディアにとって同市場での地位維持は死活問題といえる。制限が継続されれば、中国市場からの撤退を余儀なくされるリスクすらあった。
一方で、米政権としてはAI分野における主導権を国内に取り戻す動きも進めており、今回の決定はエヌビディアによる国内投資がその流れに合致した結果とも読める。
今後、米中の技術的駆け引きはさらに複雑化する見通しであり、AI関連企業にとっては、政策リスクへの対応が事業継続の鍵となるだろう。