生成AIが名作を蘇らせる 高画質化された「オズの魔法使」、ラスベガスの巨大スクリーンで再び輝く

Googleは2025年4月8日、1939年公開の名作ミュージカル映画「オズの魔法使」を、独自の生成AI技術によって高画質化し、米国・ラスベガスの巨大スクリーン「スフィア」にて8月28日に特別上映すると発表した。
AIが映画の演出に積極的に関与する画期的な試みに、世界中の映画関係者と技術者が注目している。
AIでよみがえるクラシック 「オズの魔法使」、大画面対応へ進化
1939年に公開されたミュージカル映画「オズの魔法使」は、ジュディ・ガーランドが主演を務めたアメリカ映画史に残る名作である。
今回、グーグルはこのクラシック映画を、自社の最先端生成AI「ベオ2」と画像生成AI「イマジェン3」によって、現代の映像体験にふさわしい高画質へと再構築した。
ベオ2は映像生成に特化したAIで、映像内の被写体の動きや質感を解析し、ディテールを補完する。
一方、イマジェン3は画像生成AIで、解像度の向上だけでなく、元映像には存在しなかった背景や演出を新たに生成する能力を持つ。
この2つのSIシステムにより、従来のスクリーンでは得られなかった臨場感を実現し、特に超大型ディスプレイでの上映に適応させることが可能となった。
上映が予定されるラスベガスの「スフィア」は、世界最大級の球体型スクリーンを備え、映像と音響の没入感で知られる新時代のエンターテインメント施設である。
Googleは、「ドロシーたちとともに、生成AIが映画の主役を務める」とコメントしており、本プロジェクトが単なるリマスターではなく、AIによる再創造と呼ぶにふさわしいものだと強調している。
再創造か改変か 映画業界に広がる期待と懸念
AIが関与する映画再構築の試みは、クリエイティブ業界に新たな地平をもたらす一方で、論争も呼んでいる。
映像の美しさや視覚効果の向上には評価の声が多く寄せられており、「AIによる芸術表現の可能性を示す好例だ」との意見もある。とりわけ、古典作品の復元や視覚補完においては、保存技術としての応用も期待されている。
一方で、AIによって生成された背景や演出が「オリジナル性を損なう」との懸念も根強いだろう。さらに、制作プロセスの一部をAIが担うことで、映像編集者やアニメーターといった専門職の仕事が減少する可能性もある。
雇用面での影響については、今後の政策的な議論も避けられないだろう。
このプロジェクトが成功すれば、他の名作映画の再構築も現実味を帯びてくる。
映画のリバイバルはこれまで「復元」にとどまっていたが、今後は「再創造」へと進化する可能性がある。
Googleによる生成AIの活用は、コンテンツ産業全体に変革の兆しを与える取り組みとして、多方面から注目を集めている。