トランプ大統領、石炭採掘加速の大統領令に署名 AI電力需要を背景に規制撤廃

2025年4月8日ドナルド・トランプ米大統領は、石炭採掘を加速させる大統領令に署名した。背景には、人工知能(AI)の急成長による電力需要の拡大があるとみられている。
石炭産業復活に向けた規制撤廃 AI需要を追い風に
米国のエネルギー政策に大きな転換点が訪れている。
トランプ大統領はホワイトハウスで炭鉱作業員らに囲まれながら、石炭採掘を加速させる大統領令に署名した。
大統領令には、石炭採掘に対する連邦規制の撤廃、既存の石炭火力発電所の閉鎖計画の一時停止などが盛り込まれている。
これにより、同氏は「石炭に対する政府の偏見を終わらせる」と明言し、エネルギー供給力の強化を狙っている。
この決定の背景には、急速に進化するAI技術があると考えられる。
大規模なAIモデルの訓練や運用には膨大な電力が必要とされており、米国内での電力需要は著しく増加している。
トランプ氏はこの状況を利用し、発電量を「2倍以上に増やす」との目標を掲げた。AIブームが石炭産業の復活を後押しする構図となっている。
一方で、米国の石炭発電は長らく衰退傾向にある。
2023年時点で総発電量に占める割合は16%にとどまり、再生可能エネルギー発電が21%強を占めていた。
トランプ政権はこの流れに逆行し、石炭産業のテコ入れを図る構えを見せているが、その代償として環境問題が再燃する可能性もある。
環境リスクとエネルギー政策のジレンマ 持続可能性への課題
今回の大統領令に対して、環境団体からは強い反発が起きている。
環境NGO「エバーグリーン・アクション」のディレクター、リーナ・モフィット事務局長は、AIの名を借りた化石燃料業界への便宜供与であると非難した。
「化石燃料献金者を救済する隠れみのに過ぎない」との厳しい言葉で、この政策の根幹を批判している。
トランプ政権の狙いは、労働者の雇用維持やエネルギー自給率の向上にあるとされる。
しかし、CO₂排出量の増加や大気汚染の悪化といったリスクは無視できないだろう。
再生可能エネルギーの導入が進む中で、石炭という旧来型エネルギーに政策を戻すことには、大きな戦略的な賭けが含まれていると思われる。
今後、AIによる社会変革は止まらないと思われるが、それに伴うインフラ整備の選択は分かれることになるだろう。
再生可能エネルギーへの転換を加速させる方向性が国際的な潮流である中、今回の決定はその逆を行くものであるため、米国のエネルギー政策は世界の注目を集める可能性がある。