テザー社が米国限定ステーブルコイン発行を示唆 新規制と政治動向が与える影響とは

2025年4月7日、英フィナンシャル・タイムズが報じた内容によると、ステーブルコイン「USDT」を発行するテザー社が、米国市場向けに新たなステーブルコインを発行する可能性があると示唆した。
これは規制強化と政治的支援の動きを背景としており、業界で注目を集めている。
新ステーブルコイン構想の背景にある規制と政治的追い風
USDT(※)を発行するテザー社が、米国内限定のステーブルコイン(※)発行を検討している。
これは2025年4月7日に英フィナンシャル・タイムズが報じたものであり、同社CEOパオロ・アルドイノ氏の発言に基づくものだ。
アルドイノ氏は、テザー社が米国におけるステーブルコイン規制の議論に関与していると明かし、新しい規制が競争力あるものとなれば、米国内限定の通貨発行の動機になると述べている。
この新通貨は「基本的に決済通貨」としての機能を持ち、国際市場とは異なる流通圏を構築する狙いがあるとされる。
注目すべきは、米政権のスタンスだ。アルドイノ氏は、トランプ政権がステーブルコインを「米国にとって重要なツール」と見なしていると指摘した。海外発行者に対して米国法の順守を求める方針は、国内発行の通貨に優位性をもたらす可能性がある。
なお、テザー社はこの件に関するコメントを公表しておらず、計画の具体性は不明だが、市場では同氏の発言が新たな展開の兆しとして受け取られている。
※USDT:Tether社が発行する米ドルにペッグされたステーブルコイン。暗号資産市場で最も流通量が多く、取引所間の送金や資産の退避手段として広く利用されている。
※ステーブルコイン:価格が法定通貨などに連動するよう設計された暗号資産。主に決済や送金手段として用いられる。
テザー社の戦略と米国市場におけるステーブルコインの今後
報道を受け、米国市場でのステーブルコインの立ち位置に関心が集まっている。
仮にテザー社が米国内限定の通貨を発行すれば、明確な規制の下での信頼性向上に加え、国際展開とは異なる独自戦略によって競合との差別化を図ることができるだろう。
ただし、米国の規制環境は依然として流動的であり、政権交代や議会の動きが通貨発行の成否を左右するリスクもある。
ステーブルコインを「国家の経済インフラ」と見なすかどうかという点も、政治的議論の分岐点となっている。
それでも、テザー社がこの構想を慎重に進める背景には、規制の安定と市場の成熟を見据えた中長期的戦略があると見られる。
USDTは現在、世界で圧倒的なシェアを持つが、その透明性や運用実態には批判も多い。米国発の新通貨により、法的な明確さを持った商品として再定義されれば、法人や機関投資家の参入も促進されるだろう。
米国はブロックチェーンやWeb3関連ビジネスで先進的な動きを見せており、新たな通貨はこうした領域の決済インフラとしても期待できる。
今後、テザー社が規制と政治のはざまをどう乗り越え、新たな経済圏を築くのか。その動向が、暗号資産業界全体に波及効果をもたらす可能性は高いだろう。