ドコモ、NFTで入社式を革新 SBT証明書や謎解きゲームでエンゲージメント向上を図る

2025年4月7日、NTT Digital、クリプトリエ、teketの3社は、NTTドコモグループの2025年度合同入社式におけるNFT(非代替性トークン)活用の取り組みを支援したと発表した。4月1日に東京・国立競技場で開催された入社式では、NFTを用いた入社証明書や謎解きゲームを通じ、企業文化の浸透とエンゲージメント向上が図られた。
NFTによる入社体験の再構築 証明書、ゲーム、チケットが一体化した仕組み
NTTドコモグループの2025年度合同入社式の最大の注目点は、新入社員に対して譲渡不可のNFT、すなわちSBT(Soulbound Token)形式の入社証明書が発行されたことだ。
これにより、個々の入社記録がパーソナライズされたデジタル資産としてウォレットに記録され、形式上の証明を超えた「記憶の証」として機能することが期待される。
また、式典ではNFTを活用した謎解きゲームも実施された。新入社員たちはチームを組み、競技場内に散りばめられたミッションに挑戦した。
このプロセスの中で、NFTがゲーム内のヒントや報酬として活用されており、ブランドスローガンや企業の行動原則を体験的に学ぶ場として設計されている。
さらに、ゲームの達成度に応じてNFT形式のイベントチケットが配布された。
これらのチケットはデジタル上で保存・活用できるだけでなく、参加者ごとの実績を反映したバリエーションが用意されており、個別最適化された体験の提供にも寄与している。
このような仕組みの裏側には、クリプトリエのNFTマーケティング基盤「MintMonster」および、NTT Digitalが提供する「scramberry WALLET SUITE」が活用されている。
これらの技術により、安全かつ簡便なNFT発行と管理が実現されており、Web3技術への社内理解と関心の喚起にもつながっている。
社内文化醸成の一手から業界標準へ NFT活用は「式典」から「戦略」へ進化するか
NFTを入社式に取り入れた今回の取り組みは、一過性のデジタル演出にとどまらず、企業文化醸成の観点からも意味を持つと考えられる。
新入社員にとって「入社式」という一過性のイベントを、ウォレット上に可視化された記録として保持できることは、長期的な帰属意識やモチベーションの源となり得る。
また、ゲーム性を持たせた学習体験は、従来の一方向的な企業説明や研修とは異なる能動的なアプローチであり、Z世代以降の若手社員にとって親和性が高い。
デジタルネイティブ世代に対して企業理念や価値観を伝える上で、有効な導線となりうる可能性がある。
技術面でも、ウォレットやNFTプラットフォームが一般ユーザー向けに最適化されつつある点は注目に値する。
従来は専門性が求められていたWeb3領域が、非技術職にも利用可能なレベルまで引き下げられてきており、今後は人事施策や社員研修、社内イベントなど多様な分野への展開が想定される。
企業と社員の関係を再構築する新たなツールとして、今後も注視すべき動向である。