シャープ、堺工場の一部をKDDIに売却 AI向けデータセンターへ転用

2025年4月4日、シャープが堺工場の土地や建物の一部をKDDIに約100億円で売却することが明らかになった。
売却対象は大型液晶パネル向けのカラーフィルター生産工場で、KDDIはこれをAI向けデータセンター(※)へ転用し、2025年度中の本格稼働を目指している。かつて日本の液晶産業を支えた施設が、AI市場の成長に伴い新たな役割を担うことになる。
売却の背景とKDDIのデータセンター計画
堺工場はシャープの液晶パネル生産拠点として長年稼働してきたが、市場の変化により2024年8月に大型液晶パネルの生産を停止した。
その後、対象施設は使われない状態が続いていたが、今回の売却により、KDDIがAI向けデータセンターへ転用することが決まり、遊休資産の活用が進む形となった。
KDDIは、今後のAI市場の成長を見据えた戦略の一環として、データセンター事業を強化しており、本施設を活用することで処理能力の向上を狙う。データセンターは2025年度中に本格稼働予定だ。
両社は、2024年6月にデータセンター運営会社の設立を検討していたが、同年12月に協議を終了していた。
その後、個別の施設売却という形で再び交渉が進められたと考えられる。
市場への影響と今後の展望
今回の売却は、シャープの資産整理とKDDIのAI関連事業強化という双方の戦略が一致した結果といえる。
シャープにとっては、過去の主力事業である液晶パネルからの転換を進め、経営資源を再配分する動きの一環であり、今後の収益改善につながる可能性がある。
一方、KDDIにとっては、AI向けのデータセンター需要が急速に拡大する中で、既存の施設を活用することで設備投資を抑えながら事業拡大を図る狙いがある。
国内通信大手として、クラウドやAI分野への投資を強化し、競争力を高める方針だ。
また、今回の動きは、シャープが新たな事業モデルを模索していることも示唆しており、他の電機メーカーにも同様の資産活用の流れが広がる可能性がある。
今後の市場動向にも、注目が集まるだろう。
※データセンター:インターネットサービスやクラウドコンピューティングの基盤となる施設。サーバーを大量に設置し、データ処理やストレージ機能を提供する。AI向けデータセンターは、高度な演算処理を行うため、強力なGPUや冷却設備が求められる。