AIが給油時の安全確認を代行 コスモ石油がセルフ式スタンドに導入へ

2025年3月31日、コスモ石油マーケティングは、セルフ式ガソリンスタンドにおける給油時の安全確認をAIで自動化するシステムを今夏から導入する。異常検知や利用者への警告、サポート機能を備えたこのシステムにより、事故防止と業務効率化が期待されている。
AIの活用が進むことで、セルフ式スタンドの安全性と利便性が向上する可能性がある。
セルフ式スタンドの課題とAI導入の背景
セルフ式ガソリンスタンド(※)は全国的に拡大しているが、その一方で給油時の事故が問題となっている。特に、静電気による引火、誤った燃料の使用、給油口からの漏れなどが発生しており、安全対策の強化が求められていた。
事故防止のため、従来は監視員が目視で確認していたが、人手不足の深刻化により、新たな解決策が必要とされていた。
こうした状況を受け、総務省消防庁はセルフ式スタンドにおける給油許可の運用を見直し、一定の条件を満たす場合にAIによる監視と許可を認める方針を示した。これにより、コスモ石油はAIを活用した安全確認システムの導入を決定した。
このシステムは、カメラとセンサーを用いて給油時の行動をリアルタイムで監視し、異常を検知すると警告を発する。また、音声やディスプレイによるガイド機能も備え、安全な給油をサポートする。
さらに、過去の事故データを分析し、リスクの高い行動を特定することで、より精度の高い安全対策が可能となる。
※セルフ式スタンド:利用者が自身で給油を行うガソリンスタンドのこと。日本では1998年の規制緩和を機に普及が進んだ。
AI活用のメリットと今後の展望
AIによる給油時の安全確認が実現すれば、複数のメリットが期待される。
利用者は常にAIのサポートを受けながら給油が可能となるため、不安を抱くことなく利用できるだろう。これにより、セルフ式スタンドの利用が促進されると考えられる。
店舗側にとっても大きな利点がある。監視業務の自動化により人件費を削減できると同時に、従業員の負担も軽減されると思われる。
さらに、AIが蓄積したデータを活用することで、事故リスクの高い状況を事前に把握し、適切な対策を講じることが可能となる。
一方で、AIシステムの導入にはいくつかの課題も存在する。
第一に、技術的なトラブルが発生した場合、システムが正常に機能しないリスクがある。特に、カメラやセンサーの故障が発生すると、給油時の安全確認が行えなくなる可能性がある。
また、AIによる監視は、利用者のプライバシーを侵害してしまうこともあり得るだろう。これにより、顧客の信頼を損なうリスクが生じるかもしれない。
今回のコスモ石油のAIシステムが成功を治めれば、他のガソリンスタンドチェーンや関連業界への展開も期待できる。
また今後のAI技術進化に伴い、より高度な異常検知や自動制御システムが開発されることもあるだろう。特に、過去の事故データを基にしたリスク分析が進むことで、より精度の高い安全対策が実現するのではないだろうか。
コスモ石油の取り組みは、ガソリンスタンド業界における新たなスタンダードとなる可能性を秘めているといえる。