AIが創る「音楽の未来」 オーストリア館が大阪・関西万博で描く新たな体験

2025年4月13日に開幕する大阪・関西万博で、オーストリア館が注目を集めている。
「音楽」をテーマに据え、来場者がAIを活用して自らの未来を「作曲」できる体験を提供するという。AIとアートの融合が生み出す革新的な展示は、来場者にどのようなインスピレーションを与えるのだろうか。
「未来を作曲する」 オーストリア館が示す音楽とAIの新たな関係
展示内容の中心は、過去から未来への「音楽の旅」を体験できる没入型ショーと、来場者自身がAIを活用して未来を「作曲」するプログラムだ。
AI作曲体験では、「繁栄」「人間」「惑星」といったテーマに沿って来場者が音楽と画像を生成し、最終エリア「未来の大聖堂」でその成果を共有できる。
技術基盤には、オーストリアのAI企業Klangioが開発した楽曲生成アルゴリズムが採用されている。SDGsの17目標から選んだテーマに基づき、即興で楽曲が作られる仕組みだ。最大4人で同時参加できるため、協創体験としても楽しめる。
建築デザインも音楽との結びつきを強調している。
パビリオンのシンボルとなるのは、BWM Designers & Architectsが設計した高さ16.5メートルの螺旋状オブジェだ。この形状は楽譜の流れを表現しており、持続可能性を意識した設計となっている。
また、特別イベントとして同年5月23日のナショナルデーには、ウィーン少年合唱団が特別公演を行う。このほか、オーストリアの伝統料理カイザーシュマーレンの提供や、オーストリア企業によるサステナブル技術の展示も行われる予定だ。
AIとアートの融合がもたらす未来 万博が示す新たな可能性
大阪・関西万博のメインテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に対し、オーストリア館は「未来はデザインするものではなく、作曲するもの」という独自の解釈を提示している。
音楽が持つ「社会を動かす力」に着目し、人間・自然・技術の調和を象徴する場を創り出した。
AIと音楽の融合は、クリエイティブ分野において新たな潮流を生み出しつつある。
AI技術の進化により、従来の作曲プロセスが変化し、誰もが自由に音楽を創造できるようになった。
オーストリア館の試みは、音楽を単なる「聴くもの」から「共創するもの」へとシフトさせる象徴的なプロジェクトと言えるだろう。
こうしたAI活用の潮流は、今後の音楽業界やアート分野に広がる可能性が高い。
たとえば、近年注目を集めるSuno AIなどの生成AI技術は、アーティストの創作活動を支援し、新たな表現の可能性を開いている。オーストリア館のAI作曲体験が示すように、AIはクリエイターのインスピレーションを補完し、個々のアイデアをより豊かに発展させるツールとなり得る。
すでに他国パビリオンでもAI技術の活用が増えており、デジタル技術を駆使したインタラクティブな体験が求められている。AIとアートの融合は万博を超えて社会全体に広がり、未来の創作活動のあり方を変革する可能性を秘めていると言えるだろう。