米資産運用大手CEOが警鐘、米ドルの地位低下とビットコイン台頭の現実味に言及

2025年3月31日、米資産運用大手ブラックロックのCEOラリー・フィンク氏が発表した投資家向けメッセージで、米ドルの国際的な支配力に陰りが見え始めているとの見解を示した。
ビットコインをはじめとするデジタル資産が、世界の準備通貨に取って代わる可能性に言及し、国際金融の構図が大きく揺らぐ可能性を示唆した。
米国債務の急増が米ドルの信頼性を損ない、ビットコインが代替手段に浮上
フィンク氏は、米国経済の根幹を支える米ドルが、急速な債務増加によってその信頼性を損ねつつあることについて、警鐘を鳴らした。
米国の公的債務は、GDPの3倍という速度で増加しており、その水準は前例を見ないものとなっている。
この傾向が続けば、米ドルがこれまで担ってきた「世界の準備通貨(※)」という地位が揺らぐ可能性があると分析した。
注目すべきは、フィンク氏がこの代替手段としてビットコインを名指しした点だ。
もし投資家が、国家の信用に依存しないビットコインをより安全な資産と見なすようになれば、米ドルの国際的影響力は減退しうる。
さらに、金融効率を高める分散型金融(DeFi)の技術が普及すれば、既存の中央集権的な金融モデルは競争力を失いかねない。
フィンク氏の発言は、単なる仮想通貨への言及にとどまらず、米国の経済的覇権に対する深い懸念を含んでいると受け止められる。
※準備通貨:国際貿易や金融取引において、多くの国が外貨準備として保有する通貨のこと。米ドルは長年この地位を維持してきた。
トークン化がもたらす金融の民主化
フィンク氏は、ブロックチェーン技術を活用した資産のトークン化(※)が、既存の金融システムに革命をもたらす可能性についても言及している。
従来の決済ネットワークであるSWIFTを「郵便サービス」に例えた上で、トークン化による送金や決済は「Eメール」のような即時性と効率性を持つと語った。
トークン化が進めば、従来は高額資産に限られていた投資が、少額からでも可能になる。
これにより、個人投資家を含む多くの人々が資産形成に参加できるようになり、投資の民主化が実現する見通しである。
一方で、こうした技術革新が進むことで、米国主導の金融インフラは相対的に地位を下げる可能性も否定できない。
国家という枠組みに依存しない金融の台頭は、従来の「国=通貨=経済力」という等式を揺るがす結果をもたらすかもしれない。
今後、中央銀行デジタル通貨(CBDC)や規制の枠組みがどのように整備されるかにより、このシナリオの現実味は大きく変わるだろう。
だが、すでに世界各地で進むトークン化の流れを見れば、この動きが一時的な潮流ではなく、構造変化の兆候であると考える方が自然だ。
今後は、投資の民主化が進行していくことが見込まれる。
新たな金融についての情報格差が機会の不平等につながる可能性もあるため、周知を促す活動は官民で必須と言えるだろう。
※トークン化:不動産や株式などの資産を、ブロックチェーン上でデジタル証券(トークン)として表現すること。流動性の向上や透明性の確保などが期待されている。