サントリー、キャッシュレス自販機アプリ「ジハンピ」を2025年3月から全国展開

サントリーは2025年3月より、独自開発したキャッシュレス自販機アプリ「ジハンピ」を全国展開すると3月27日に発表した。
2024年12月から北海道で実施した先行導入では利用者から高い評価を得ており、2025年内に15万台規模での普及を目指す。
急速に進むキャッシュレス化、飲料自販機の新たな標準を狙う「ジハンピ」
サントリーが打ち出した「ジハンピ」は、これまで遅れが指摘されてきた自販機業界におけるキャッシュレス化を一気に加速させる取り組みだ。国内の飲料自販機は約230万台存在するとされるが、キャッシュレス対応は約40%にとどまっており、コンビニなどと比較しても利便性に課題があった。
サントリーが行った調査でも、自販機利用者の約30%が「現金がない」「小銭を持ちたくない」などの理由で購入を断念した経験があることが判明している。
こうした状況を背景に登場した「ジハンピ」は、アプリをインストールするだけで最短60秒で利用開始が可能だ。
氏名や年齢などの登録も不要で、即座にキャッシュレス決済が行える。決済手段もPayPayやクレジットカードを含む13種に対応し、楽天ポイントなど5種のポイントも利用可能とすることで、幅広い層にとって使いやすい設計となっている。
2024年12月に北海道で行われた先行導入では、「早くて便利」との声が多く寄せられており、一定の成果を挙げたと言える。これらの実績を踏まえ、サントリーは2025年内に全国15万台への導入を目指している。
利便性向上と新たな購買体験、サントリーの次なる一手
「ジハンピ」は単なるキャッシュレス対応アプリではない。
インストール直後からスムーズに使える操作性や、ポイント活用などの付加価値が加わることで、ユーザー体験そのものの向上を図っている点が注目に値する。
特に、アプリ内でのポイント利用は、現金よりもお得に飲料を購入できる仕組みとして今後の広がりが期待されるだろう。
キャッシュレス決済が広まる一方で、現金を好む層や、デジタルデバイドの影響を受ける高齢者などが取り残される可能性がある。特に、アプリの利用に不安を感じる人々にとっては、従来の自販機の利用が難しくなるかもしれない。
そのため、キャッシュレス決済に対する不安を解消するための教育やサポート体制の整備が重要である。これにより、より多くの人々が「ジハンピ」を利用し、キャッシュレス自販機の普及が進むことが期待される。
また、サントリーは「ジハンピ」を単なる決済手段にとどめず、自販機自体をメディアやマーケティングの場として活用する戦略も視野に入れている。
2025年以降、AIやデータ分析を活用したパーソナライズド広告(※)や、ユーザー行動に合わせた新たなプロモーション施策を実装する可能性も示唆されており、今後の展開が注目される。
自販機のキャッシュレス化が進むことで、飲料業界全体の販売機会が拡大することは間違いないだろう。ジハンピの普及はその起点となることが期待されている。
※パーソナライズド広告…ユーザーの属性や行動履歴などに基づいて最適化された個別最適な広告を指す。購買意欲を高める効果があるとされる。