スペースシフトら、気象情報と生成AIを活用した衛星観測自動化の実証実験に成功

2025年3月21日、スペースシフト、ハレックス、Tellusの3社は、気象情報をトリガーとした生成AIによる衛星観測自動化の実証実験に成功したと発表した。この取り組みは、災害時の迅速な対応や観測効率の向上に寄与することが期待されている。
気象情報と生成AIが導く衛星観測の新時代
今回の実証実験は、スペースシフトのビジネス共創プログラム「SateLab(サテラボ)」の一環として行われた。2024年4月にスペースシフトとハレックスが業務提携を締結し、企画段階から緊密に連携して推進してきた。
ハレックスは気象情報や専門的知見を提供し、スペースシフトがシステム開発を担当した。このシステムでは、気象情報の内容から生成AIアルゴリズムが自動的に関心領域(AOI:Area Of Interest)を指定し、観測の効率化を図る画期的な仕組みを実現している。
2025年1月から2月にかけて実施された実証実験では、ハレックスが発信する積雪に関する気象警報アラート情報をもとに、スペースシフトが開発した生成AIアルゴリズムがAOIを自動決定した。
その後、Tellusのオンデマンドタスキングシステムを通じて衛星へのタスク割り振りを行った。今回は実証のため担当者による確認を行っており、半自動での実施となっているが、気象情報をトリガーとして衛星観測を行うまで完全に自動化することも可能である。
ただし、気象情報に依存するため、情報の正確性やタイムリーさが求められる。
誤った情報に基づく観測が行われた場合、逆に混乱を招くリスクも考慮しなければならない。
実証実験の成果と今後の展望
1月20日には、パスコ社が運用する衛星「ASNARO」が富士山地域での初撮影に成功した。さらに、アクセルスペース社の「GRUS」を含む2種類の光学衛星が日本各地の撮影を実現している。特に大規模災害時において、迅速な衛星観測は非常に重要であり、今回の実証はその実現可能性を示している。
本実証実験のシステムには、経済産業省の「多種衛星のオンデマンドタスキング及びデータ生産・配信技術の研究開発」の一環として、Tellusが開発を行っているオンデマンドタスキングシステム、およびAmazon Web Services(AWS)が提供する生成AIサービス「Amazon Bedrock」が使用された。
今回の実証実験は、国の政策とも連動していることにより、技術の普及が進む可能性が高く、他の分野への応用も期待できる。特に防災・減災分野においては、実用的なソリューションとしての価値が高まるだろう。
今後は、気象予測と連動した衛星観測の対象地域の拡大や、AI解析技術の高度化、気象情報以外のトリガー情報による実証を進め、防災・減災分野での実用的なソリューションとして展開されることが期待される。