アステックス、データセンターで液冷システムの負荷試験に参画

2025年3月18日、アステックスはNTTデータおよび日比谷総合設備が運営する「Data Center Trial Field」での共同検証事業に参画することを発表した。この事業を通じて、アステックスはこれまでの負荷試験の実績を活かし、液冷システム負荷試験装置の開発に取り組む。
データセンター運用の最適化へ
データセンターの需要が急増する中、従来の空冷方式では冷却効率に限界がある。特にクラウドサービスや生成AIの進展に伴い、高密度なサーバー環境が求められており、液体冷却技術(※1)の革新が不可欠だ。この課題に対応するため、アステックスは液冷技術の負荷試験を強化し、データセンターの運営最適化を目指す。
アステックスは2013年から300カ所以上のデータセンターで性能検証を行ってきた。
特に総合連動試験(IST※2)を用いた包括的な検証に強みを持ち、運用上の課題を明確にする技術を有している。
「Data Center Trial Field」は、2024年11月に開設したデータセンター向け冷却技術を実機環境でテストするための施設である。本施設には最新の水冷・液冷技術を活用した設備が導入されており、アステックスはこれらを活かして高性能データセンター向けの液冷システム負荷試験装置の開発を促進する。
今後、アステックスは年間36件の総合連動試験(IST)を実施することを目標としている。これにより、データセンターの冷却効率を向上させるとともに、持続可能なエネルギー利用の実現にも貢献する考えだ。
アステックスの役割と今後の展望
液体冷却技術の普及は今後さらに加速すると考えられる。
AIの活用拡大に伴い、データセンターの計算需要は増大の一途をたどっており、従来の空冷技術だけでは対応が難しくなっている。特に、ハイパースケールデータセンターやエッジコンピューティング環境では、高密度なサーバー群を冷却するために液冷技術の導入が進むだろう。
また、サステナビリティの観点からも、液冷技術の価値は高まる。エネルギー消費の削減や熱再利用の可能性を考慮すると、企業の環境負荷低減戦略と親和性が高い。今後、規制の強化や環境基準の厳格化が進めば、液冷システムを標準装備とするデータセンターが増加する可能性がある。
アステックスの負荷試験装置が、こうした液冷技術の実用化を後押しできるかは今後の焦点となる。負荷試験のデータが蓄積され、信頼性が確立されれば、より多くの企業が液冷システムを採用しやすくなるだろう。
さらに、技術の進化により、よりコンパクトで低コストな液冷ソリューションが登場すれば、中小規模のデータセンターにも普及する可能性が高まる。
総じて、液冷技術はデータセンター業界において不可欠な要素となるだろう。アステックスの取り組みが、この流れを加速させるかどうか、今後の動向に注目したい。
※1 液体冷却技術:従来の空冷方式ではファンやヒートシンクを用いて冷却するが、液体冷却技術では冷却液を直接電子機器に接触させ、熱を効率的に移動・放散させる方式。
※2 総合連動試験(IST):複数のシステムや機器が連携して動作する際に、個別の性能だけでなく、システム全体としての挙動や相互作用を検証する試験。これにより、運用の安定性と効率化を図ることができる。