光通信衛星コンステレーション実証へ、NECが光ルーター基盤技術開発

NECは2025年3月19日、光通信衛星コンステレーションの構築に向けて「衛星コンステレーション統括部」を新たに設置し、光ルーターの基盤技術の開発に着手すると発表した。通信インフラの強靭化とセキュリティ確保を目指す。
経済安全保障に応えるNECの動き、光通信基盤の開発に着手
NECは2025年4月1日付で、光通信衛星コンステレーション(※)の構築を担う新組織「衛星コンステレーション統括部」を設置する。
宇宙空間に展開される低軌道衛星を活用し、地上インフラに依存しない通信ネットワークを構築する動きとみられる。
本事業は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が設置する「宇宙戦略基金」の「宇宙光通信ネットワーク実現に必要となる光ルータ基盤技術開発」と「光通信衛星コンステレーション構築及びシステム実証に係る技術開発」に採択された。
同基金は宇宙分野における先進技術の早期確立を目指して設けられた制度であり、NECは補助金の交付を受けて、光ルーター基盤技術の実用化を目指すとされる。
光通信衛星のコンステレーションが構築する通信ネットワークにおいては、光通信端末が物理的な帯域資源を担い、一方でルーターがネットワーク間の接続性や通信の高速性、安定性といった品質を左右する役割を果たすという。
※光通信衛星コンステレーション:多数の小型衛星を低軌道に配備し、レーザーによる光通信で相互接続することで、地上ネットワークに依存しない高速・大容量通信を可能にするシステム。
世界初を達成したNECの技術、次は宇宙インフラへ
かつてNECが設計・製造に携わった「衛星間光通信システム(LUCAS)」は、宇宙空間での光通信によって、低軌道を飛行する地球観測衛星と静止軌道上の光データ中継衛星の間で情報を中継するための装置である。
波長1.5マイクロメートルのレーザー光を用いたこのシステムは、現在、光データ中継衛星「データ中継衛星1号機(JDRS-1)」に搭載されている。
過去には、このシステムを用いて、JDRS-1と先進レーダー衛星「だいち4号(ALOS-4)」間で最大1.8Gbpsの光通信リンクを確立することに成功した。
さらに、だいち4号が取得した観測データは、LUCASを介して静止軌道上のJDRS-1を経由し、地上の受信局まで正常に送信されたという。これは世界でも初めてのことであった。
NECの光通信衛星コンステレーション構築計画は、2026年度末の基盤技術開発完了、2027年度末の地上実証、2029年度末の軌道上試験と段階的に進められる予定である。
スケジュール通りに進めば、2030年代には日本独自の光通信ネットワークが確立し、政府・防衛用途だけでなく、民間企業やIoT分野にも応用される可能性がある。
ただし、国際競争も激化しており、米国のスペースXやAmazonのKuiper計画、中国の衛星通信網構築など、各国の動向にも注視する必要がある。
日本がこの分野で優位性を確立するためには、技術開発のスピードとともに、コスト削減や商業化への戦略が鍵となるだろう。