NECがリハビリ×AI技術で医療革新へ、3つの新技術を発表

NECは2025年3月13日、リハビリテーション分野にAI技術を活用した新たな取り組みを発表した。スマートフォンやタブレットを用いた映像解析による運動指導、非接触での呼吸可視化技術、歩行センシングインソールによる歩容分析など3つの技術を柱とする。
同社は2030年度にはヘルスケア事業で5000億円の価値創出を目標に掲げており、今回の技術開発はその一環と位置付けられる。
リハビリ効率化へ3つの技術を開発
NECが今回発表したリハビリ×AI技術は、医療現場と日常生活の双方を幅広くサポートすることが特徴となっている。
1つめの技術は慢性腰痛改善に焦点を当てた運動指導技術だ。
これはスマートフォンやタブレットの映像解析技術を活用し、自宅でのエクササイズを正確に行えるよう支援するもので、2025年度中のサービス提供開始を予定している。
2つめが、タブレット端末を用いた非接触の呼吸可視化技術である。
この技術は腰痛と呼吸機能の関連性に着目し、呼吸トレーニングの効果を数値化することが可能となる。「NEC呼吸可視化サービス」として3月末までに提供が開始される見通しだ。
3つめの技術は、歩行センシングインソールを活用した脳卒中リハビリ支援技術である。
センサーをインソール(※)に組み込むことで、特別な装置ではなく日常的に使用する靴で歩行データを取得できる点が画期的だ。
脳卒中患者の歩行に関するデータを収集することで、スマートフォンアプリから分析結果を得たり、専門家からのアドバイスを受けることができる。
※インソール:靴の中敷きのこと。ここでは足裏のデータを取得するセンサーが組み込まれた特殊な中敷きを指す。
データ分析強化と個別化医療がヘルスケア市場を変革
NECのヘルスケア分野における研究開発アプローチは、データ分析の強化と個別対応の充実という二つの軸で進められている。
現在、生成AIや画像解析、グラフ解析技術などを駆使したデータ分析基盤を構築しつつあり、アジャイル型の開発手法を採用することで、研究成果の迅速な市場投入とフィードバックによる改善サイクルの確立を目指しているという。
また個人ごとに最適化されたケアの提供に向け、健康状態に関するデータの長期的な収集・分析システムの開発にも注力している。
高齢化社会においてリハビリテーションの重要性は増していく傾向にあり、データ収集とAIによる分析が、日常的な健康管理の実現につながることが期待されている。
NECは技術開発を通じて、病気の早期発見や予防医療の領域でも成果を上げることを目標としているため、同社のAI技術がヘルスケア産業全体に与える影響は小さくないだろう。2030年度に向けた同社の取り組みは、医療のデジタル化と個別化という世界的なトレンドを加速させる原動力になると考えられる。