韓国政府、国家戦略技術に6兆4000億ウォン投入 AI転換と技術融合を推進

韓国科学技術情報通信省は2025年3月12日、「国家戦略技術特別委員会」の第10回会議を開催し、「第1次国家戦略技術育成基本計画(2024〜2028)」の2025年施行計画を議決した。12の国家戦略技術分野に総額6兆4000億ウォン(約5000億円)を投じる計画だ。
この施策は、人工知能(AI)技術の転換と異分野の技術融合を中心に据え、競争力の強化を目指す。特に、10大フラッグシッププロジェクトの推進やスタートアップ支援を通じて、技術革新の促進に注力する方針だ。
競争力向上を目指した予算増額とAI転換の推進
2025年の国家戦略技術予算は、前年より30%増の6兆4000億ウォンに設定された。これは、AIをはじめとする先端技術分野の研究開発(R&D)を強化し、国際競争力を高める狙いがある。
AI転換(※)は、今回の施策の柱の一つだ。政府は、産業全体でのAI活用を推進し、異分野の技術融合を促進することで、新たな技術革新を生み出すことを期待している。特に、製造業や医療分野では、AIを用いた生産性向上や診断技術の向上が進められている。たとえば、AIによる新薬開発の自動化や、スマート工場の導入拡大が進行中だ。
また、量子技術やバイオテクノロジーといった分野も重要視されている。これらの技術とAIを掛け合わせることで、これまでにない革新的なソリューションが生まれる可能性も考えられる。
政府は、国家戦略技術の競争力を高めるため、10大フラッグシッププロジェクトを推進する。このプロジェクトには、AIを活用した新薬開発や、量子コンピュータの研究、次世代半導体技術の開発が含まれる。特に、半導体分野では、韓国が国際市場での優位性を維持するための取り組みが進められている。
スタートアップ支援も強化される。国家戦略技術分野におけるスタートアップ企業を対象に、3070億ウォン規模の非R&D事業が展開される予定だ。
これにより、技術革新を進める新興企業の成長を後押しし、エコシステムの活性化を図る狙いがある。特に、AIやバイオテクノロジーを手がける企業に対し、資金支援やインフラ整備のサポートが提供される。
今後の展望
今後、韓国の技術戦略は、AIを核とした産業変革を加速させる方向に進むと考えられる。
短期的には、スマート工場の普及やAIを活用した新薬開発が進展し、特定の分野で目に見える成果が生まれるだろう。
中長期的には、量子コンピュータや次世代半導体の研究が進み、国家としての競争力が左右される要因となる。特に半導体分野では、米中の技術覇権争いの影響を受けながらも、韓国独自の強みを生かした戦略が求められるはずだ。
また、スタートアップ支援が成果を上げれば、技術革新の担い手が増え、エコシステムの成熟が期待できる。
一方で、AIと労働市場の関係は今後の重要な課題となり、技術進歩に伴う雇用の変化をどのように調整するかが問われるだろう。
政策の柔軟性や国際協力の動向も、戦略の成否に大きく影響すると考えられる。