Astar Networkの概要と提携事例【日本発のパブリックブロックチェーン】
本記事はWeb3領域に関心を持っている方向けの記事です。
Astar Networkは、NTTドコモを始めとする多くの事業者と提携して、ブロックチェーン技術の普及を促進しています。
本記事ではAstar Networkの概要や提携事例を解説することで、Web3についての理解を深めることを目指します。
Astar Networkの概要
Astar Networkは、渡辺 創太氏がCEOを務めるStake Technologiesが開発をしている日本発のパブリックブロックチェーンです。
マルチチェーン時代のスマートコントラクトプラットフォームを目指し、2022年1月にメインネットがローンチされました。
特徴
Astar Networkには大きく3つの特徴があります。
XVM(Cross Virtual Machine)
Astar Networkは「WASM」と「EVM」の2つの仮想マシンに対応しています。
・WASM:WebAssemblyの略。C++,Rust,TypeScript等の開発言語からコンパイル可能。
・EVM:Ethereum Virtual Machineの略。開発言語はSolidity。
2つの仮想マシンに対応することで、開発者が使いやすい言語でスマートコントラクトを開発できるので、開発者をAsterエコシステムに呼び込みやすくなります。
しかし、2つの仮想マシンは規格が異なる為、データの通信等ができません。
そこで開発されたのが「XVM」です。
XVMは、WASMとEVMの間に相互作用を持たせることで、両者間のデータ通信を可能にさせます。
例えば、WASMのdApp上にあるトークンを担保に、EVMのdAppでトークンを借入することができます。
XVMによって、シームレスな世界を実現することができ、ユーザーの利便性が向上することが期待されます。
現在、XVMはテストネットで実装されています。
いくつかのテストを経て、メインネットに実装される予定です。
Build2Earn
エコシステムの発展には、優秀な開発者が必要です。
Astar Networkは、開発者をエコシステムに誘致するために「Build2Earn」を採用しました。
Build2Earnは、エコシステムへの貢献度が高い開発者に金銭的インセンティブが渡るように設計されています。
具体的には、Build2Earnプログラムに申請して承認されたら「dApp Staking」にリストされます。
dApp Stakingでは、ネイティブトークンASTRのホルダーが自分の好きなプロジェクトにステーキングすることができます。
より多くのステーキングを集めたプロジェクトが、より多くの金銭的インセンティブを受け取れる仕組みとなっているので、開発者が開発を続ける動機となります。
スマートコントラクトプラットフォーム
現在、数多くのブロックチェーンが存在していますが、それぞれの規格が異なるため、ブロックチェーン間の通信が困難な状態にあります。
Astar Networkは、この状況を打破するために、マルチチェーン時代のスマートコントラクトプラットフォームを目指しています。
図のように、Astar Networkがハブとして機能し、各ブロックチェーンをつなげる役割を担います。
現在は「HRMP」や「cBridge」を通じて、30以上のブロックチェーンがつながっています。
・HRMP:Moonbeam、Acala、Bifrostなど10以上のブロックチェーンと通信可能。
・cBridge:Ethereum、BNB、Polygon、Optimisimなど20以上のブロックチェーンと通信可能。
まだ開発段階であることから、Polkadotのリレーチェーンを介したり、ブリッジ機能を利用しないとブロックチェーン間の通信ができない状態です。
将来的には、ブロックチェーン間で直接通信が可能になる「クロスチェーン」が実現するように開発が進んでいます。
Astar Networkの提携事例
Astar Networkは、この一年で多くの企業や自治体との提携を発表しました。
現政権がWeb3を成長戦略の柱と公表したこともあり、事業者の注目度が高いことが伺えます。
この章では、提携事例を深掘りすることでWeb3の可能性について考察していきます。
NTTドコモと協業の基本合意を締結
Web3の普及に協力して取り組む為、NTTドコモと協業を発表しました。
この協業により、両者の持つ知見を活かし、地方創生や環境問題などの社会課題に対してアプローチしていくとのことです。
具体的な施策はまだ発表されていませんが、通信事業という生活に欠かせないインフラを取り扱うNTTドコモとの協業で、Web3が一気に普及する可能性があります。
考えられる施策は、NTTドコモのユーザーに対してウォレットの導入や、それに伴う暗号通貨決済でしょうか。
今後の動向に要注目です。
福岡市がAstar Japan Labに参加
福岡市が自治体として初めてAstar Japan Labに加入しました。
Astar Japan Labは、Astar Networkを利用したビジネス創出に関心がある事業者の交流・協業を目的としたコンソーシアム組織です。
福岡市はスタートアップ支援に力を入れていることで有名です。
今回の加入によって、既にWeb3領域で成功しているAstar Networkの知見を活かし、福岡市からWeb3スタートアップが誕生するように取り組みます。
福岡市に続き、仙台市や渋谷区もAstar Japan Labに加入しました。
Web3という大きなムーブメントに乗り遅れないよう、自治体も熱心にWeb3に取り組んでいることが分かります。
AsterFarm 博報堂とカルビーとコラボ
AstarGamesが開発を行う「AstarFarm」が博報堂とカルビーとコラボを発表しました。
AstarFarmは、Astar Network上で展開されているGameFiです。
ネイティブトークンASTRを預けることで、野菜を育てることができ、収穫した野菜次第で貰えるトークンが変わるといった仕組みになっています。
今回のコラボでは、限定のジャガイモを収穫したユーザーに対して、カルビーのジャガイモの商品が自宅に届き、Web3で得たものがリアルの世界で受け取れる体験ができます。
Web3マーケティングの活用事例として、非常に注目を集めました。
Astar Network×日本市場について
渡辺 創太氏は自身のTwitterで日本市場について、このように発言しています。
グローバルに事業を展開する上で、地の利を活かした戦略に重きを置いており、日本を重要マーケットとして見ているようです。
事実、Astar Networkは日本の事業者向けの組織を複数設立しています。
これらの組織の動向を追うことで、最先端のWeb3プロジェクトを知れるかもしれません。
Web3領域に関心がある方は、フォローしてみてはいかがでしょうか。
代表的な組織を紹介します。
博報堂キースリー
Twitter:https://twitter.com/H_KEY3
博報堂キースリーはWeb3ハッカソンを企画・運営する会社です。
2022年12月に博報堂とAstar Networkが連携し設立されました。
Web3ハッカソンを通じて、開発者に機会を提供し、博報堂の強みである企画力と掛け合わせて世界に通用するサービスを生み出すことを目的にしています。
先日、最初のプロジェクトとして、トヨタ自動車をスポンサーとしたハッカソンの開催を発表しました。
ハッカソンのテーマは「企業向けDAOサポートツールの開発」です。
自律分散的思考を活かした組織運営に役立つツールの開発が行われる予定です。
このように、個別企業ごとのハッカソンを開催することで、大企業ならではのアセットを活用したWeb3サービスが生まれることが期待されています。
最先端のWeb3プロジェクトに関われるチャンスですので、興味のある方はフォローしましょう。
Aster Japan Lab
HP:https://astar.network/japan/
Astar Japan Labは、Astar Networkを利用したビジネス創出に関心がある事業者の交流・協業を目的としたコンソーシアム組織です。
2022年6月に設立され、現在は約100の企業や自治体が参加しています。
定期的なイベントはもちろん、Astar Networkのコアチームとの交流もでき、これからWeb3領域に参入を検討している方にとって、これ以上ない場となっています。
既にブロックチェーンやNFTを活用して事業を行っている企業も参画しているので、興味のある方はHPから登録してみてください。
Startale Labs
Twitter:https://twitter.com/StartaleHQ
Startale Labsは、Web3事業やプロダクト開発を行う会社です。
Astar Networkの豊富な経験をもとに、エンタープライズ向けにR&Dやコンサルティングの提供を行い、Web3のマスアダプション化を推進することを目的に設立されました。
現在はシンガポールで設立されていますが、近々日本でも法人登記される予定となっています。
2023年1月3日に設立されたばかりなので、具体的な情報はまだ出ていません。
公式Twitterをフォローし、Startale Labsの動向をチェックしましょう。
Astar Networkの展望
現在、レイヤー1ブロックチェーンは乱立している状況です。
圧倒的な存在感を誇るEthereum、Bizdevに強みを持つPolygon、世界最大の取引所がバックにいるBNBなど強者達がマーケットのシェアを奪い合っています。
この環境下で、Astar Networkは生き残っていけるのでしょうか。
結論として、Astar Networkはオリジナリティを磨くことで存続すると思います。
理由は、Astar Networkのオリジナリティは他チェーンでは模倣が難しいからです。
私が考えるAstar Networkのオリジナリティは、以下の2点です。
・日本発のパブリックブロックチェーン
・XVM(Cross Virtual Machine)
Astar Networkはグローバルに展開しながら、地の利を活かして日本の名だたる企業との提携を進めています。
影響力のある企業がAstar Networkのブロックチェーンを利用することで、ネットワーク効果が働き、日本企業がブロックチェーンを活用する時はAstar Network上で展開することが慣例になるかもしれません。
これは、他のチェーンでは模倣ができないことだと思います。
また、XVMもAstar Networkのオリジナリティを磨く重要な要素です。
EVMとWASMの両方の仮想マシンに対応することで、開発者の利便性が高まり、優秀な人を集めやすくなります。開発者コミュニティが盛り上がれば、ユニークなサービスが生まれるはずです。
そこで、EVMとWASM間の通信がシームレスに行われることで、ユーザー体験は劇的に向上し、自然とエコシステムに人が集まってくるでしょう。
XVMの技術を模倣することはできるかもしれませんが、先行者優位の観点ではAstar Networkの強みになると思います。
以上のことから、Astar Networkはオリジナリティを磨き続けることで、他のレイヤー1ブロックチェーンの中でも存在感を発揮し、より発展していくことが予想されます。
興味を持った方は、ぜひフォローしてみてはどうでしょうか。
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参考文献
- サムネイルの画像は各種HP、Twitterから引用
- Aster Docs
- Astar Network HP
- Astar Network Medium
- Astar Japan Lab HP
- 博報堂キースリー HP
- 渡辺 創太氏 Twitter