IIJと河村電器産業、AI用サーバー対応のモジュール型エッジデータセンターを共同開発

IIJ(株式会社インターネットイニシアティブ)と河村電器産業は2025年3月11日、生成AI向けのGPU搭載サーバーに対応可能なモジュール型エッジデータセンターを共同開発したと発表した。
本データセンターは、急増するAI需要に応えるために設計されており、設置の柔軟性や高い電力供給能力を備えている。
モジュール型データセンターの特長と市場のニーズ
IIJと河村電器産業が開発したモジュール型エッジデータセンター(※)は、AI処理を効率的に行うための新たなインフラとして注目されている。
モジュール型設計を採用し、19インチサーバーラック、サーバー冷却装置、UPS(無停電電源装置)、物理セキュリティを一体化。サイズは幅120cm、奥行き200cm、高さ230cmとコンパクトで、屋内外を問わず設置可能な設計となっている。
本データセンターの大きな利点は、建築基準法に該当しない点にある。
設置時に建築確認申請が不要なため、導入のスピードとコスト効率を大幅に向上させることができる。
従来のデータセンターと比較して短期間で稼働させることができるため、急増するAI需要に迅速に対応できるというメリットがある。
また、1モジュールあたり45kWの電力供給能力を持ち、消費電力の大きいGPU搭載サーバーにも対応可能だ。
さらに、複数のモジュールを連結することで、利用規模に応じた柔軟な拡張が可能となる。従来のデータセンターと比べて設計の自由度が高く、需要変動に合わせた運用がしやすいことを意味する。
IIJと河村電器産業は、本データセンターの試作品を「Data Center Japan 2025」に出展し、実施パートナーの募集を行う。実際の運用環境での性能評価と改良を進め、2025年度下期の製品化を目指す方針だ。
課題と今後の展望
本データセンターの活用範囲は広い。製造業の生産現場や医療機関では、AI処理をローカルで行うことで、遅延を抑えたリアルタイム分析が可能になる。リモート拠点でのGPUクラウド事業においても、需要に応じた拡張が容易な点が強みとなる。
さらに、自動運転、スマートビル管理、工場自動化、クラウドゲーミングといった分野でも活用が期待されている。
IIJはこれまでもクラウドやネットワークインフラに関するソリューションを提供してきた実績があり、河村電器産業は電力設備やデータセンター向けソリューションを展開している。
しかし、AI処理の需要が拡大し続ける中で、モジュール型エッジデータセンターがどこまで拡張できるのかはわからない。
現状では柔軟な拡張性が強調されているが、限られたスペースの中でどれほどの処理能力を確保できるのか、具体的な検証が求められる。
今後の鍵となるのは、実際の運用における性能評価と改良だ。
データセンター市場はすでに多くのプレイヤーが存在するため、IIJと河村電器産業がどのように競争力を確保するかが焦点となるだろう。
※エッジデータセンター:クラウドデータセンターに比べ、小規模で分散型のデータセンター。遅延を抑えたデータ処理が可能となり、リアルタイム性が求められるAIやIoT用途で活用される。