那覇市、生成AI導入で行政サービスの革新を目指す

那覇市は2025年3月3日、NTTコミュニケーションズと「特化型生成AIの共同実証による未来協創連携協定」を締結した。
この協定は、生成AI技術を活用し、市民サービスの向上と行政業務の効率化を図るもので、全国の市町村で初の試みである。
生成AI「tsuzumi」を活用した行政業務の効率化
那覇市とNTTコミュニケーションズは、自治体業務に特化した生成AIモデルの共同実証を開始する。
この取り組みでは、NTTが開発した大規模言語モデル「tsuzumi」を活用し、議会資料の作成や市民からの問い合わせ対応など、庁内業務の効率化を目指す。
実証期間は2年半から3年を予定しており、段階的に適用範囲を拡大していく計画だ。
具体的な取り組みとして、まず庁内の共通業務を対象に「特化型生成AIモデル」の実証と評価を行う。たとえば、那覇市議会の議事録を学習したAIによる議会答弁書作成業務のサポートが挙げられる。さらに、職員向けの研修を通じて生成AIの知識習得を促進し、効果的な業務活用のノウハウを蓄積する。
これらの取り組みにより、持続可能な自治体経営のモデルケースを構築することを目指している。
市民サービス向上と持続可能な自治体経営への期待
この協定により、那覇市は生成AIを活用した市民サービスの向上も視野に入れている。
将来的には、デジタルヒューマンや対話技術と組み合わせた市民向け応対業務のデジタル化を進め、総合案内やオンライン申請、問い合わせ応答などをデジタル上で完結させることを目指す。これにより、人口減少や高齢化が進行する中でも、効率的かつ質の高い行政サービスの提供が可能となる。
知念覚市長は、民間のノウハウを活用し、自治体に特化した生成AIモデルを確立することで、市民サービスの向上と業務の効率化を図る意向を示している。
また、NTTコミュニケーションズの九州支社長も、地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献する意気込みを語っている。
那覇市の取り組みが成功すれば、自治体DXの先進モデルとして全国に波及する可能性が高い。生成AI「tsuzumi」の運用ノウハウが蓄積され、他の自治体に応用できる体制が整えば、全国的に行政サービスの効率化が進むと考えられる。
議会対応や問い合わせ処理などの自動化により、業務効率が大幅に改善し、限られた人的資源を政策立案や住民対応に再配分できるだろう。
しかし、AIモデルの継続的な運用にはコストとデータセキュリティ、雇用への影響などの課題も考えられる。単なる業務削減ではなく、AIと人間が共存する新たな働き方への転換が必要になるだろう。
AI導入に伴う職員のスキルアップ支援や再配置の計画を進めることで、持続可能な自治体運営が可能となると考えられる。