NASA、ボイジャー探査機の科学装置の一部を停止し電力確保へ

NASAは2025年3月5日付けで、惑星探査機「ボイジャー1号」と「ボイジャー2号」の科学装置をそれぞれ1基ずつ停止する決定を下した。
星間空間での観測をできる限り長く継続するための電力確保が目的だという。
電力減少への対応策
報告によれば、ボイジャー1号に関しては、宇宙線検出装置である宇宙線サブシステム(CRS)(※)を2025年2月25日に既に停止しているという。
一方、ボイジャー2号に関しては、プラズマを観測する装置である低エネルギー荷電粒子観測装置(LECP)が3月24日に停止される予定だ。装置の一部を停止することで消費電力を抑えることができ、約1年分の電力を追加で確保できる見通しとなっている。
現在、ボイジャー1号は低エネルギー荷電粒子観測装置、磁力計、プラズマ波サブシステムの3基が稼働中である。ボイジャー2号については宇宙線サブシステム、磁力計、プラズマ波サブシステムの3基が動作を続ける見通しだ。
NASAのプロジェクトマネージャーであるSuzanne Dodd氏は「電力は残り少なくなっている。今の段階で機器を停止しなければ、あと数か月で電力が尽き、ミッション終了を宣言せざるを得なくなるだろう」と語った。
同氏によれば、この対応は決して容易ではなかったというが、ミッションの長期継続のために判断をしたとのことだ。
※宇宙線サブシステム(CRS):高エネルギー粒子である宇宙線を検出し、そのエネルギーやタイプを測定する装置。銀河宇宙線や太陽からの荷電粒子を観測する。
2030年代まで観測延長を目指す
1977年に打ち上げられたボイジャー探査機は、現在太陽系の外縁部を航行中である。
ボイジャー1号は地球から約248億9321万km(166.4天文単位)の位置にあり、通信には約23時間14分を要する。
ボイジャー2号は約208億1062万km(139.1天文単位)離れており、信号の往復には19時間30分かかるという状況だ。
両探査機はプルトニウム238の崩壊熱を利用した放射性同位体熱電気転換器(RTG)(※)で電力を得ているが、その発電量は年々減少している。
NASAは2026年にもボイジャー1号のLECPとボイジャー2号のCRSを停止する計画を立てており、少なくとも2030年代までは1基の科学装置を稼働させ続けることを目標としているとのことだ。
ボイジャー探査機は、人類が作ったなかでも、最も遠くまで到達した人工物として知られている。両機が送り続ける星間空間のデータは、太陽系外の環境に関する貴重な情報源となっており、今回の措置によってその観測期間が延長されることは、宇宙物理学にとって大きな意義を持つと考えられる。
※放射性同位体熱電気転換器(RTG):放射性物質の崩壊によって生じる熱を電気に変換する装置。太陽光が届かない遠方での宇宙探査に用いられる電源システム。