衛星データによる地盤変動監視サービス「LIANA」体験版が無償提供開始

スカパーJSAT・ゼンリン・日本工営の3社共同開発による地盤変動モニタリングサービス「LIANA」の体験版が2025年3月6日より無償公開された。
このサービスは合成開口レーダー(SAR)(※)衛星データを活用し、地盤変動をミリメートル単位で検出する技術を実用化したものである。
体験版では1km×1kmのエリアを対象に、地表の微細な変動を可視化することが可能となっている。
最先端のSAR解析技術と地図データの融合で災害リスクを早期発見
LIANAサービスの中核となる技術が、スカパーJSATが独自開発した「位相解析アルゴリズム」だ。
従来のSAR解析では衛星から発射されたマイクロ波の振幅(強度)を主に分析していたが、この新アルゴリズムは電波の変化量を高精度に追跡する。これにより、地表の微細な起伏変化をこれまでのセンチメートル単位からミリメートル単位へと、約10倍高い分解能で検出することが可能になった。
解析対象となるデータは2014年以降のアーカイブを活用し、同一地点の長期にわたる変動を連続的な時系列として把握できる点が特徴的と言える。
さらに、ゼンリンの詳細地図と国土地理院の標準地図を統合することで、変動エリアの周辺影響を視覚的に把握することを可能にした。
リスク判定においては、国土交通省の地盤伸縮計データと日本工営の専門技術者評価を組み合わせた独自基準を採用している。これにより±3mmの誤差範囲(JIS A 1218基準適合)という高精度な監視が実現されたのである。
宮城県周辺では、すでにこの技術を活用した盛り土の経年変化監視が行われており、災害発生前に補強工事を実施するという成果を上げている。従来の現地測量に比べ、費用を60%削減したという実績も注目されている。
※合成開口レーダー(SAR):人工衛星から地表に向けてマイクロ波を照射し、その反射波を解析することで地表の状態を観測する技術。
段階的な全国展開と将来予測機能の実装計画
体験版の価格体系は、1km×1kmのエリアが無料で利用可能となっている。
商用版としては、3次メッシュ単位で年間21万円(税別)の基本プランと、複数メッシュを対象とする広域プラン(要相談)が用意されることになった。
従来のドローン測量と比較すると、広域監視におけるコストが1/5以下に低減される点が大きな優位性となっている。また、過去10年間の変動履歴を即時可視化できることから、長期的な地盤変動傾向の把握にも適しているといえるだろう。
今後の展開としては、2025年度中に全国47都道府県の主要都市を対象に体験版エリアを拡大する計画が発表されている。
さらに2026年にはAI予測機能を追加し、地盤変動の「将来予測モード」を実装する見通しである。
日本地盤工学会の技術委員長は「衛星データと地図情報の融合により、広域防災計画の策定効率が革命的に向上する」とコメントしており、専門家からの評価も高いことがうかがえる。自治体や建設業界を中心に、このサービスへの関心が高まっている。