世界最高精度の「光格子時計」を島津製作所が発売へ 地震予測にも期待

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 島津製作所は2025年3月5日、東京大学の香取秀俊教授らが開発した世界最高精度の「光格子時計」を発売した。

この時計は、100億年にわずか1秒の誤差という驚異的な精度を持ち、地震や火山活動の監視など、自然災害の予測への応用が国内外で注目されている。

目次

光格子時計の開発背景と技術的特徴

光格子時計は、従来のセシウム原子時計を大きく上回る精度を持つ次世代の時計技術である。東京大学の香取秀俊教授を中心とする研究チームが2001年に提唱し、その後の研究を経て商業化に至った。

この時計は、レーザー光で形成された格子状の空間内にストロンチウム原子を捕捉し、その原子の振動を基に時間を測定する。精度は100億年にわずか1秒の誤差であり、セシウム原子時計に比べて100倍以上も精密である。

さらに、光格子時計の小型化と堅牢化が進んでいる。
2024年11月には、従来の可搬型光格子時計の約4分の1の容量である250リットルの装置開発に成功した。これにより、研究室外での実用化が進み、社会基盤への実装が期待されている。

また、今回発売されたモデルは、幅114センチ、高さ109センチ、奥行65センチ、重さ200キログラムと比較的小型かつ堅牢であるため、搬送や設置の自由度も高い。
価格は1台5億円と高価ではあるが、その高度な性能を考慮すると妥当だろう。

島津製作所は今後3年間で10台の販売を目指しており、国内外の研究機関からすでに多くの問い合わせが寄せられているという。

光格子時計がもたらす今後の展望

光格子時計の高精度な時間計測技術は、防災や自然災害の予測分野で重要な役割を果たす可能性がある。高精度な原子時計では、地上わずか数センチメートルの標高差で一般相対性理論に基づく時間の遅れを観測可能になる。

この原理を利用した「相対論的センシング」という新しい応用技術が注目されており、地盤の微細な変動をリアルタイムで検知し、地震や火山噴火の兆候を早期に察知することが可能になると期待されている。

さらに、光格子時計は標準時の精度向上にも貢献している。
情報通信研究機構(NICT)は2022年、光格子時計を用いて協定世界時(UTC)との時刻同期精度を±20ナノ秒以内から±5ナノ秒以内に向上させることに成功した。
これにより、通信や測位システムの精度向上が見込まれる。

光格子時計の技術革新は、科学研究のみならず社会インフラにも大きな影響を与える可能性が高い。
今後、さらなる小型化や堅牢化が進めば、防災・減災対策をはじめ通信インフラなど、幅広い分野での活用が広がっていくだろう。

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