アマゾン、量子チップ「オセロット」で量子コンピューティング市場に参入

アマゾンが量子コンピューティング分野への本格参入を果たし、エラー訂正効率を従来より最大90%向上させた量子チップ「オセロット」を2025年2月27日に発表した。
各企業が量子コンピュータへの参入を進める中、競争を激化させ、量子コンピューターの実用化が大きく前進する可能性が高まっている。
エラー訂正技術が量子コンピューティングの実用化を加速
アマゾンが開発した量子チップ「オセロット」は、量子コンピューティングにおける最大の課題であるエラー問題の解決に大きく貢献する可能性を秘めている。
このプロトタイプには「キャットキュービット(※)」技術が採用されており、特定のエラーを抑制するよう設計されているのが特徴だ。量子状態の重ね合わせを利用することでエラーの影響を軽減する仕組みとなっている。
アマゾンの量子ハードウェア部門ディレクター、オスカー・ペインター氏は「オセロットは量子コンピュータにおけるエラー対処方法において際立っている」と述べた。従来の量子チップと比較して、エラー訂正の効率性を最大90%向上させる技術的基盤を持つことから、長年にわたって課題とされてきたエラー率の低減に大きく寄与するものと見られる。
量子コンピューティングは、従来のコンピュータが使用する二進法のビットではなく、量子ビット(キュービット)を使用する点が革新的だ。キュービットはより多くの情報を保持し、複数の状態を同時に存在させることができるため、従来のコンピュータでは解決困難な複雑な問題に対応できると期待されている。技術的にも産業的にも大きな前進となるだろう。
※キャットキュービット
シュレディンガーの猫という量子物理学の思考実験に由来する技術。量子状態の重ね合わせを利用して量子情報を保護し、エラーの影響を軽減する仕組み。
量子コンピューティングが切り開く未来の可能性
アマゾンが量子チップ領域に参入したことで、量子コンピューティングの応用分野にも大きな影響を与えると予測される。
特に新薬の発見においては、複雑な分子のシミュレーションを高速に行うことで、従来よりも効率的な薬剤開発が実現すると言われている。また、サステナブルな食料生産に関しても、量子コンピュータを活用した農業における最適化や新しい作物の開発に寄与する可能性がある。
一方で、量子コンピュータの発展は暗号技術にも影響を及ぼす。
現在の暗号技術を破る能力を持つ量子コンピュータの開発が進むことで、情報セキュリティには新たな課題が生まれることになる。ビットコインなどの暗号資産も、影響を免れないだろう。なお、対策として、量子耐性のある暗号技術の開発も同時に進められている。
2月19日には、Microsoftが新たな量子チップ「Majorana 1」を発表し、大きな注目を集めるなど、量子コンピューティング産業の競争が激化しつつある。
今後、各社の技術革新がさらに加速することになるだろう。
参考 : 量子コンピューターが解決する「人類の難問」(https://plus-web3.com/media/cpkaiketu/)