新興企業「天地人」、マレーシア科学大学と共同研究を開始 衛星データとAIで水資源とエネルギー問題に挑む

日本のスタートアップ企業「天地人」は2025年3月4日、マレーシアの国立マレーシア科学大学(USM)と提携し、衛星データとAI技術を活用した共同研究を開始すると発表した。
この研究では、漏水リスク評価や再生可能エネルギーの適地選定を目的とし、持続可能な社会の実現を目指す。
天地人の技術と共同研究の背景
天地人は、衛星データとAI技術を駆使した土地評価コンサルティングを行う日本のスタートアップ企業である。
衛星データを活用した地理情報システム(GIS ※)との統合により、詳細な環境分析やリスク評価を可能にしている。また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)認定企業としての強みを活かし、高精度なデータ解析を実施している。
今回発表された共同研究は、マレーシアのUSMと連携し、水道管の漏水リスク評価と再生可能エネルギーの適地選定を進めるものだ。
マレーシアでは、老朽化した水道インフラの維持管理が課題となっており、漏水による水資源の損失が問題視されている。
一方で、再生可能エネルギーの導入拡大も国策として推進されており、最適な設置場所の選定が求められている。
天地人は、過去の気象データや地形情報をAIで解析し、漏水リスクの高い地域を特定する技術を開発している。これにより、都市部の水資源管理の効率化が期待される。
また、再生可能エネルギーの適地選定においては、太陽光や風力発電の最適な設置場所を割り出し、効率的なエネルギー利用を促進することを目指している。
※GIS:地図データと統計データを組み合わせ、空間的な分析を行うシステム。都市計画や環境管理に広く活用されている。
AI活用の効果とASEAN地域での展望
天地人とUSMの共同研究により、マレーシアの都市インフラやエネルギー政策に具体的な影響を与えると期待されている。
特に、AIを活用した漏水リスクの分析は、従来の手法よりも迅速かつ精度の高い診断を可能にする。メンテナンスの効率化や水資源の節約が実現し、経済的なコスト削減にも貢献できると考えられている。
また、再生可能エネルギーの適地選定に関する技術は、マレーシア国内のみならず、ASEAN地域全体への応用が視野に入っている。天地人は、マレーシアを拠点にASEAN市場への進出を進めており、域内の政府や企業と連携を強化する方針だ。
今後、天地人の技術がASEAN地域で広く活用される可能性は十分にある。
都市化の進行による水道インフラの老朽化問題や、再生可能エネルギーの普及という課題は多くの国に共通しており、AIと衛星データを活用したアプローチは汎用性が高い。
一方で、技術が実用化されるには、現地政府や企業との連携が不可欠だ。
ASEAN諸国では政策の変更が頻繁に行われることもあるため、長期的な視点でパートナーシップ構築を行うことが成功の鍵となる。
AIによるリスク評価の透明性や信頼性を高めるためには、現地の技術者や研究機関と協力し、社会に受け入れられる形での技術普及が求められるだろう。