Curve Warsとは?仕組みを分かりやすく解説
Curve Wars。単語は聞いたことあるし、なんとなく理解はしているものの、説明してと言われると困る…
Curve Warsはインセンティブ設計を理解する上でとても重要な事件の一つです。
この記事を読めば、Curve Warsとは何か?Curveのどこがすごいのか?Convexのどこがすごいのか?を説明できるレベルで理解できます。是非この機会に理解しておきましょう。
Curve warsとは
Curve Warsとは、簡単に言うと流動性の獲得競争の一つです。
DeFiではインセンティブの設計がとても重要であり、ここが上手く設計できていないプロジェクトは全て失敗してしまいます。
DeFiにおけるインセンティブ設計のほとんどは、
- トークンの売却を思いとどまらせること
- トークンの流動性を高めるよう促すこと
を解決するために考えられます。
今までのインセンティブ設計はユーザーが流動性提供を行うことで、報酬としてトークンを貰うという直接的な構造でしたが、Convex等アグリゲーターの登場により、インセンティブ設計が徐々に複雑化している傾向にあります。
アグリゲーターの登場に伴う流動性の獲得競争は、様々なプラットフォームで展開されていますが、最も争いが熱かったCurveでの競争が「Curve Wars」と呼ばれています。
Curveとは
CurveはUniswap等と同じDEX(分散型取引所)の一種です。
特徴としては、独自のアルゴリズムを使うことで、大量のスワップを行ってもUniswap等と比較して取引価格に影響が出にくいという点が挙げられます。
よって大量の価格変動の少ないコイン(ステーブルコイン)同士をスワップするのに最適なプラットフォームとなっており、TVLを大幅に増やしています。
またインセンティブ設計にも特徴があります。
Curveでは流動性提供を行うと、そのプールの取引手数料の一部が分配されるとともに、CRVというCurveの独自トークンを報酬として受け取ることができます。
例えば「3pool」を見てみましょう。取引手数料の分配でAPR0.83%を稼ぐだけでなく、CRV報酬としてAPR0.87〜2.17%を獲得することができます。
また「tricrypto2」を見てみると、取引手数料の分配がAPR2.46%、CRV報酬がAPR8.92%〜22.32%を獲得でき、合計するとAPR11.38〜24.78%の報酬を獲得することができます。
インセンティブがCRVの獲得だけでは、ユーザーはCRVを保有する理由がないのでCRVはすぐに売られ、価値が0に近くなります。
しかしCurveはveCRVという仕組みを使うことで、CRVの価値が下がらないように設計しています。
veCRVの仕組み
Curveでは取引を行う際に必ず取引手数料を払わなければなりません。
そして手数料の半分は流動性提供者、もう半分はveCRVの保有者に支払われます。
veCRVはCRVをロックする見返りとして受け取る事ができます。
また先程の「tricrypto2」ではCRV報酬がAPR8.92%〜22.32%と幅があったと思いますが、CRV報酬はveCRV保有者の投票で決定されます。
例えば「tricrypto2」の投票がない場合は8.92%ですし、より多くの投票を獲得した場合、最大22.32%の報酬が獲得出来ます。
CRVをロックすることで2つのインセンティブが発生します。
- Curve全てのプールから受動的な収入を得る事ができる
- 自分のプールに投票することで得られるCRV報酬が増える
これは画期的なトークノミクスで、より多くのトークンを発行してもユーザーが売らないインセンティブが設計されています。
また投票の機能を分けて考えてみましょう。
CRV報酬はveCRV保有者の投票で決まるので、より多くの人がCRVをロックし、veCRVを保有しようとします。
個人では大きな影響力を持つことはできませんが、プロトコル単位で見ると大きな力が働きます。
取引量を増やしたいプロトコルは多くのveCRVを手に入れ、流動性を増やしたいトークンに投票することで、割り振られるCRVの量が増えLPトークンの利率が上がり、そのLPトークンを持つインセンティブを強める事ができます。
つまり独自トークンの流動性を高めたいプロトコルは、より多くのveCRVを獲得しようとします。
これがCurve戦争の始まりです。
Curve warsの勝者、Convexとは
Convexとは、簡単に言うとCRVの利回りアグリゲーターです。
出来るだけ多くのCRV報酬を手に入れるには、より多くのCRVを長期間ロックしてveCRVを手に入れる必要がありました。そして個人の力には限界があります。
Convexでは、ユーザーのCRVトークンを集めて代わりにCurveに預け、運用することで、CRV報酬を出来るだけ高めることが出来ます。
CRVをConvexに預けると、cvxCRVがもらえます。ユーザーはこのcvxCRVをステークすることで、Convexが獲得するveCRVの報酬が分配されます。
ユーザーは
- cvxCRVはロック不要なので、引き出したい時に引き出し、売却可能
- 独自トークンCVXも獲得できるので、直接Curveに預けるよりも、APRが高くなる
といったメリットがあります。
なおConvexは報酬の一部を手数料として徴収するため、Curve、Convex、ユーザーに三方良しの関係が成立します。
またCRV報酬の振分けはCVXの投票によって決まります。CRV報酬が高いと流動性提供が多くなるので、流動性を高めたいプロトコルは出来るだけ多くのCVXを集め、自分のプールに投票しようとします。
要約すると、
- ユーザーはCRVをロックすることなく、veCRVの報酬を得ることができる
- veCRVの報酬に合わせてCVXも貰えるので、直接Curveに預けるよりAPRが高くなる
- Convexは多くのveCRVを保有しているため、CRV報酬の振分けをコントロール可能
- CRV報酬の振分けはCVXによる投票で決定
- トークンの流動性を高めたいプロトコルはCVXを取得するインセンティブ発生
と整理できます。
CVXの賄賂経済
上で解説した通り、トークンの流動性を高めたいプロトコルはCVXを取得することで、CRV報酬を高め、自分たちのプールを好条件にして流動性を確保しようとします。
しかし大量のCVXを購入するより、もっと良い方法はないでしょうか?
そこで登場するのが賄賂です。賄賂と聞くと聞こえが悪いですが、ここで言う賄賂とは、CVXホルダーに自分のトークンに投票するようお金を払うことです。これはCVXを大量に購入するよりも、賄賂を払って投票してもらった方が長期的には安くすむという考えに基づいて行われています。
様々なプロトコルが同じように考えて賄賂を渡そうとするので、賄賂の額は常に変化します。
CVXホルダーが賄賂を利用するのはとても簡単で、毎週割り当てに投票して報酬を請求するのみでOKです。
またVotiumというプロトコルに自分の投票を委任することで自動的に運用してもらうことも可能です。
Votiumの欠点として、少量の様々なコインを大量に得ることになり、いくつかは請求して得られる金額よりもガス代の方が高くなる場合があるので注意しましょう。
要点を整理します。
- Convexは多くのveCRVを保有しているので、 CRV報酬をコントロール可能
- CRV報酬が高いと流動性が集まりやすい
- CRV報酬をコントロールするために、プロトコルはCVXをコントロールしようとする
- CVXをコントロールするには、CVXを買うか、CVXの保有者を買収するか
- CVXホルダーはVotiumに委任することで、自動的に高いAPRをもらう事ができる
賄賂の効果検証
では本当に賄賂を渡すことがプロトコルにとってメリットになっているのでしょうか?
実際にデータを見ながら検証していきましょう。
引用:https://dune.com/rplust/Vote-Locked-Convex-Token-(vlCVX)-Bribes
上図はCVXの賄賂額を現した棒グラフです。この中で賄賂の額が一番多い「FXS」を見ていきましょう。2021.12.15〜2022.5.3までが分かりやすく賄賂額が多いことが分かります。そしてこの時の取引量は以下のとおりです。
引用:https://www.coingecko.com/en/coins/frax-share
上図はFXSの取引量チャートです。2021.12.20から取引量が急上昇し、赤の補助線から2022.5の初旬に急下降していることが分かります。ちなみにトークン価格は以下のとおり。
引用:https://www.coingecko.com/en/coins/frax-share
当然ですが、取引量とトークン価格は同じように動いており、2021.12.20から取引量が急上昇し、2022.5の初旬に急下降しています。
これらのことから、プロトコルは賄賂を払うことで取引量の増加・トークン価格の上昇と言うメリットがあるということが分かりました。
一方、図を見て分かる通り、賄賂というドーピングを止めると、分かりやすくパフォーマンスが下がっています。
あくまで賄賂は短期的なものなので、使う目的・タイミングを良く考えて利用する必要があります。
まとめ
本記事ではCurve Warとは何かを出来るだけ分かりやすく解説しました。
Curve WarはConvexの勝利で終わりましたが、次はConvex戦争で誰が勝つかに注目が集まっています。
更にConvexはCurve以外のveCRVモデルのプロトコルの主導権を握ろうと動いていますし、veCRVモデル以外のプロトコルでも新しい流動性戦争が始まろうとしています。
流動性戦争は始まったばかりであり、今後更に複雑になっていくことが予想されるので、どこが主導権を握るか注視したいと思います。
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参考文献
本記事に使用した文献は以下になります。
- 画像に関しては、記事中にリンクを記載
- https://every.to/almanack/curve-wars
- サムネイル画像はこちらより引用