「SECがイーサリアム現物ETF承認」を初心者にもわかりやすく解説!
2024年7月22日、米国証券取引委員会(SEC:Securities and Exchange Commission)が暗号資産(仮想通貨)の「イーサリアム(ETH)」を現物運用する上場投資信託(ETF:Exchange Traded Fund)を承認しました。
そうは言われても、この出来事が何を意味するのか分からない方や、今後どんな影響があるのか知りたい方に向けて、本記事では初心者にもわかりやすいよう、かみ砕いて解説します。
「米国証券取引委員会(SEC)」とは
米国証券取引委員会(SEC)とは、債券や株式などの証券取引を監視するアメリカの連邦政府機関です。投資家保護と公正な取引市場を実現するために1934年に設立されました。
SECは、司法に沿った強力な権限を持つ独立機関であり、不公正取引への処分権も有しています。これまでは、不正な相場操縦やインサイダー取引などを防止する活動を行ってきました。
「イーサリアム(ETH)」とは
イーサリアム(ETH)とは、2013年に考案されたブロックチェーンプラットフォームおよび、プラットフォーム内で使用される暗号資産(仮想通貨)のことを指します。
世界初の暗号資産(仮想通貨)として有名な「ビットコイン(BTC)」に次ぐ、時価総額第2位の暗号資産(仮想通貨)としての地位をイーサリアムは長年維持しています。
イーサリアムに関してより詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
「上場投資信託(ETF)」とは
上場投資信託(ETF)とは、金融商品取引所(東京証券取引所など)に上場している投資信託です。
ETFは、取引所の取引時間内であればいつでも売買可能なのが特徴であり、1日に1回しか取引できない「投資信託」にはない利点と言えます。
投資信託のイメージは上図の通りです。
今回のイーサリアム現物ETF承認によって、図の右側にある「株式、債券、CD・CP・デリバティブなど」に「イーサリアム」も加わったと考えてください。
上場投資信託や投資信託は、運用方針に基づいて専門家が運用し、その成績に応じて損益が投資家に分配される仕組みのため、投資額からマイナスになる可能性もあることには注意が必要です。
暗号資産(仮想通貨)現物ETF承認の経緯
今回話題になっている「イーサリアム現物(※)ETF承認」の前に、既にビットコインがSECによって現物ETF承認されています。
(※)現物:「現物取引」のこと。実際に持っている資金を取引時に支払う方法であるため、手元資金以上の損失はない。
対照的に、取引時には資金の受け渡しはせず、暗号資産・仮想通貨の将来売買を約束する取引は「先物取引」という。
つまり、イーサリアムの現物ETF承認は暗号資産・仮想通貨においてはビットコインに次ぐ2例目ということになります。
ビットコインの現物ETFは2024年1月10日にSECによって承認されました。
しかし、この背景には、ビットコインの現物ETFが長年認められてこなかった過去があります。
2017年末頃からビットコインの現物ETFを求める声が上がっていましたが、「詐欺や相場操縦のリスクが高い」などの理由からSECが承認を拒否し続けたなかで、2024年にようやく現物ETFが承認されました。
SECは2024年の現物ETF承認後においても、ゲンスラー委員長が「ビットコインそのものを承認・推奨するわけではない」と声明文を発表し、ビットコインのリスクに関して注意喚起をしています。
ビットコインやその他の暗号資産・仮想通貨はボラティリティが高く(価格変動が大きく)、マネーロンダリングや詐欺といった違法行為の危険性もあるため注意が必要です。
一方、そのようなリスクがあるなかでビットコインやイーサリアムが現物ETFとして承認されたことは、暗号資産・仮想通貨が価値ある資産の一つとして認められ始めていることも意味します。
イーサリアム現物ETF承認の影響
メリット
セキュリティ性の向上
イーサリアム現物ETF承認によって、セキュリティ性の向上が見込めます。
『「上場投資信託(ETF)」とは』でも解説したとおり、ETFでは専門家が運用方針に従って、投資家から預かった資金を運用します。
そのため、投資家一人一人が暗号資産や仮想通貨のセキュリティに気を遣う手間が省け、専門知識を有した人(会社)が高いセキュリティ性を担保してくれる利点があります。
暗号資産・仮想通貨のマスアダプション(大衆化)につながる
イーサリアムの現物ETFが承認されたことによって、今後さらに暗号資産および仮想通貨が大衆に受け入れられることが期待されます。
今までは「暗号資産・仮想通貨=怪しいもの、詐欺」というイメージがぬぐい切れていませんでした。
しかし、アメリカで強力な権限を持つSECがイーサリアムを認めたことで、暗号資産・仮想通貨業界のトップ2(ビットコインとイーサリアム)が一定以上の信頼を得たことになります。
さらに、「暗号資産取引所」という一般人には馴染みのないツールを使用せずとも、ビットコインやイーサリアムの取引をETFを介してできるようになったため、ますます暗号資産や仮想通貨が多くの人にとって身近な存在となります。
デメリット
暗号資産・仮想通貨を用いた違法行為の増加
イーサリアムが現物ETF承認されると、暗号資産や仮想通貨を用いた違法行為が増加する危険性があります。
メリットで言及したように、イーサリアム現物ETF承認はより多くの人を暗号資産・仮想通貨業界に引き込む期待感があります。
一方で、より多くの人が暗号資産や仮想通貨に触れるということは、それだけ犯罪の件数も増える恐れがあることを意味します。
よって、個人としても業界としても、今まで以上に入念な犯罪対策が必要になるでしょう。
通貨価格の急激な変動
イーサリアムの現物ETF承認によって、通貨価格が急激に変わる可能性があることには注意が必要です。
実際、ビットコインが現物ETF承認された際は、承認されてからの2か月間で1.5倍ほどの急激な価格変動がありました。
この時は価格が上昇したため被害は少なかったかもしれませんが、急激な価格変動があると、予想外の損失を被る危険性もあるため注意が必要です。
まとめ
「SECがイーサリアム現物ETF承認」とは、アメリカで大きな権限を持つ機関が暗号資産(仮想通貨)を上場投資信託として認めたということです。
この出来事により、暗号資産・仮想通貨業界ではさらなる発展が見込め、今以上に大衆に認知・理解されるきっかけとなります。
一方で、SECのゲンスラー委員長も言及しているように、暗号資産・仮想通貨に危険が潜んでいることも確かなので、用心しながら運用するようにしましょう。
暗号資産の詐欺対策としては、以下の記事をご参照ください。
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