2023年のWeb3トレンド、直近の資金調達から来年を紐解く
年越しが目前となりました2022年ですが、皆さんはいかがお過ごしですか?
クリプト・NFT領域は3ヶ月で1年分進むと言われているだけあり、今年もあっという間にトレンドが移り変りました。
本記事では、前半で今年のNFTを中心としたトレンドやイベントについて簡単に振り返り、後半ではシードラウンドの資金調達について振り返りつつ、来年のトレンドを予測してみます。
2022年のWeb3トレンドを振り返る
2022年前半は、国内におけるNFT取引量が大幅に増え、いろいろなメディアや個人ライターが新規参入者向けにOpenSeaでPolygonチェーン上のNFTを購入する際に使用するWETHの入手方法を解説する記事を目の当たりにしました。
デジタルコンテンツの新たな市場というクリエイター視点での盛り上がる一方、
NFTを用いて資金を調達し、それらの資金用途をNounsホルダー同士で決議できる仕組みを作ったNouns DAOというプロジェクトや、
中央集権的なストレージでメタデータが保存されるNFTに対し、絵柄の全てをSVGとして描画しオンチェーン上に記録するCyberBrokersというフルオンチェーンNFTプロジェクトがトレンドになっていました。
※実際のところは、オフチェーンを参照しているメタデータをオンチェーンにバックアップする仕様となっているためフルオンチェーンの厳密性には議論の余地が残ります。
当時は、国内中心のユーザーと国内外のプロジェクトを俯瞰して追っているユーザー間で、
「NFTとは?」「NFTはどうあるべきか?」といった議論が活発化し、
その流れの中でフルオンチェーンNFTや、IPFSという分散ファイルストレージ、メタデータの保存方法について様々な意見が飛び交い市場全体のリテラシーの向上が図られたタイミングだったように思います。
また、2022年はNFT関連のイベントが国内外含めかなり多く開催されていました。
- 1月:NFTHack
- 2月:NFT | LA
- 4月:Miami NFT Week, NFT Tallinn, SanDiego NFT Convention, Paris NFT Day
- 6月:NFT.NYC
- 7月:Global NFT Summit London, IVS Crypto 2022 NAHA, Non Fungible Tokyo 2022
- 8月:NFT Music Festival, Half Moon Bay Blockchain & NFT Summit
- 9月:NFT Show Europe, NFT Seattle, NFT ART TOKYO
- 11月:NFT London, Non-Fungible Castle (NFT Castle)
特に、6月のNFT.NYCではブルーチップと呼ばれるNFTコレクションが主催する会場やホルダーイベント等のパーティが盛んに行われており、NFT市場のグローバルな熱狂を感じられるイベントでした。
coindesk JAPANでは、パーティ三昧のNFT.NYCと年末年始で価格が大きく下落した暗号資産市場との乖離についてシニカルに描かれています。
この頃から徐々に、NFTに対するユーティリティに違和感を持つユーザーが増えてきたように考えます。
ウェブ3とは何なのか?NFTの価値が長期的に何になるのか?ますますわからなくなってきている。私は、様々な人気NFTを保有する人たちの集まりを歩き回ってみて、NFT価格が急落する中でも、保有したことを後悔する人は1人も見つけられなかった。
coindesk JAPANによる『パーティ三昧のNFT NYCとはいったい何だったのか』より引用
2022年のWeb3の資金調達を振り返る
調達状況も見ていきましょう。
※今回はDefiLlamaで欠損のないデータを用いて分析をしていたため、同サイトに掲載されていないプロダクトを紹介できていませんのでご了承ください。
出資額は、年始のトレンドの波と重なるように増えていきましたが、第二四半期の終盤に起きたクリプトベースのヘッジファンドThree Arrows Capitalの破産、ならびにLUNAショックによりクリプト及びNFT市場はベアマーケットに移行してしまいました。
これにより、第二四半期以降の出資総額が低迷する一方で、ファンドは一つ一つのプロダクトに巨額投資をするのではなく、様々な領域に分散して投資を行うようになりました。
そのような市況から、これまで出資が目立たなかった、Social Platformや新興L1チェーン、Hardware Walletなど、トークンを所有した先のプロダクトやインフラレイヤーといったカテゴリへの投資がより多く実施されるようになりました。
バブルが弾け、より長期目線でプロダクトに投資されるエコシステムの循環を感じますね。
NFTカテゴリはベアマーケットになってもなお好調であり、その内訳も多様でした。
調達した各プロジェクトの概要は以下のようになっています。
2022Q1
・NFT Marketplace for Music
・Physically-backed NFT platform
Q2
・royalty program
・trading and vaulting platform for collectibles
Q3
・NFT trading & pricing protocol
・Web3 gaming guild
・branded digital collectible
・community-first NFT swaps and financing marketplace
Q4
・NFT分析・取引ツール
・カレッジスポーツファン向けNFTプラットフォーム
・デジタル・コレクティブ プラットフォーム
・セレブリティやアーティスト向けメタバースオンボーディングツール
・NFTマーケットプレイス
・Web3 scifiゲーム
・NFT インフラストラクチャ・プロトコル
・ソーシャル・コレクティブプラットフォーム
シードラウンドの資金調達はプロダクトローンチ前のアイデア構想段階で実施される性質上、今後のトレンドを測る上で一つの指標になります。
本記事の後半では、直近で資金調達をおこなったプロジェクトを紹介しつつ、2023年のトレンドを予測します。
直近で調達したWeb3プロジェクト3選
Revel
リリース:2022年12月14日
調達額:780万ドル
ラウンド:シード
リード:Dragonfly Capital
サービスページ:https://www.revel.xyz
Revelは、ユーザーが自分のフォロワーや友人、コミュニティのためにNFTを作成したり、自分が好きなメディアやフォローしているメディアのNFTコレクションを所有することができるソーシャルメディアとしてのNFTプラットフォームです。
Revelは、”Proof of Demand Minting”という『投稿者が発行したNFTは誰でもミントすることができるが、コレクションを集めた人だけがさらにミントできる』仕組みを構築しています。
これまでOpenSeaといったNFTマーケットプレイスで購入し、SNSで自慢したりホルダー限定イベントに参加するといったある種限られたコミュニティで共有されていたNFTを、ソーシャルメディアとしてラップすることで、NFTのミントや所有を通した投稿者と閲覧者の間により親密な関係を築こうとしている点が特徴的です。
Decent
リリース:2022年12月14日
調達額: 350万ドル
ラウンド:シード
リード:Archetype
サービスページ:https://decent.xyz/
Decentは、アーティストがより簡単にWeb3プロジェクトを構築するためのノーコード・ローコードツールです。同ツールには、アーティストやブロックチェーンに関する前提知識がいないユーザーでも簡単に高度なプロジェクトを立ち上げられる『Creator HQ』という機能と、開発者が利用できる『モジュラー・プロトコル』が存在します。
Creator HQ
・Ethereum、Polygon、Arbitrum、Optimismに対応
・ライブリリースの一元管理
・収益を追跡し、ボタンをクリックするだけで資金を引き出せる
・ロイヤリティの分割とメタデータ管理
・自分専用のリリースページ
・埋め込み可能なiFrameの作成
・View analytics *coming very soon!
モジュラー・プロトコル
・クリエイター向けスプリット機能付きERC721A
・ERC4907Aに準拠したレンタブルトークン
・ダイナミック・プライシング・モデル
・NFT AMM
・NFTステーキングとコミュニティトレジャリー
・Airdrop、allowlisting、トークンゲート、その他
Descentの特徴は、徹底的に音楽アーティストやライブパフォーマーにターゲットを絞っている点です。音楽専門のNFTマーケットプレイスなどは登場していますが、まだまだNFTを制作するレイヤーにおけるツールは充実していません。
その点において、幅広いチェーンへの対応やERC4907Aといったレンタル用の最新規格を採用しつつ実用的なツールを展開しているDescentは非常に期待が高まります。
今後はこういった高度な技術や知識を翻訳したような簡易ツールが、いわゆるSaaSと同様の展開を進めていくのではないかと筆者は考えています。
CYPHEROCK
リリース:2019年
調達額: 100万ドル
ラウンド:シード
リード:不明
サービスページ:https://www.cypherock.com/
Cypherock X1は、シードフレーズのバックアップを必要としないハードウェアウォレットです。
これまでの暗号資産ウォレットには、悪意のあるスマートコントラクトに権限を与えないように署名を確認するという障害点に加え、
秘密鍵及びシードフレーズを流出しないように管理する障害点が存在しました。
同プロダクトはユーザーのシードフレーズを、シャミアの秘密分散法というアルゴリズムを使って秘密鍵を5つの要素に分割し、X1デバイス本体と4枚のX1カードに保存しています。
ユーザーはこれらの5つのシャードのうち2つ以上保有していれば秘密鍵を復元することができます。
公式HPによれば、これらの分散されたシャードを世界各地に保管することで、より資産の安全性を担保することができるような図が描かれていますが、筆者は思わずハリーポッターに登場する「あの人」の分霊箱を思い出してしまいました。
今後、マス層をクリプト・NFT市場へ引き込んでいくためには、アプリケーションの充実に加えてウォレット作成・管理・署名操作の簡易化とセキュリティ耐性を向上させていく必要があります。
筆者としては、秘密鍵を安全に管理するハードウェアウォレットは重要と感じる一方、
ハードウェアウォレットを使用した際の署名の操作の簡易化も重要になってくるのではないかと考えています。
その点で、CHPHEROCKはウォレット本体にカードをタップすることで取引を承認することができるためSafepalやLedgerのように小さな画面を操作したりQRコードを読み取る必要がなく比較的簡単な操作で取引を承認できます。
2023年のWeb3トレンドを予測してみる
今回の記事では、2022年のトレンドやイベントを簡単に振り返りと、1年間の資金調達状況、直近でシードラウンドを終えたプロダクトを紹介しました。
2022年前半は、コレクティブNFTが爆発的に話題となった2021年の流れを引き継いでいたものの、徐々にNFTに対するユーティリティや実用性について議論されるようになりました。
筆者としては、2023年はよりますアダプションを志向したプロダクトが多くローンチされると考えています。
その上で、マス層を引き込んでくるために取り組むべき観点を以下に示します。
・ウォレット作成と管理方法の簡易化
・署名時のセキュリティ担保と操作の簡略化
・クレジットカード決済や後払い決済等の支払い手段の充実
・クリプト・NFTを意識せずとも使いたくなるアプリケーションの充実
直近の資金調達を眺めていると、上記で示した課題を意識したプロダクトに投資が実施されているように感じられますし、
来年以降には、上記4点のいずれかを踏まえたプロダクトが大量にローンチされるのではないかと考えます。
これまでプロトコルとしての美しさや革新性に対して目線が向かっていましたが、
今後は技術的には簡易的でありながら一般的に分かりにくい部分を翻訳したSaaSのようなサービスや、クリプトやNFTといった言葉を使わずさりげなく組み込むサービスも増えていくと考えます。
来年のクリプト・NFT市場がどのような発展をするか、正直分からないことばかりですが、現時点で投資家が注目している領域について調達ニュースから取り上げました。
各プロダクトの半年後を楽しみにしましょう!
みなさま良いお年をお過ごしください。
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参考文献
本記事に使用した文献は以下になります。
- amberfiによる2022年のNFT・クリプト関連イベントのリストはこちら
- DefiLlamaによるシードラウンドの資金調達リストはこちら
- TechCrunchによる『Revel raises $7.8M to become the Instagram and Robinhood of NFT platforms』の記事はこちら
- Descent.xyzによる『Decent raises $3.5M led by Archetype to deliver creators access to versatile, low & no-code web3 creation tools』の記事はこちら
- The BLOCKによる『NFT infrastructure protocol Decent raises $3.5 million from Y Combinator and others: Exclusive』の記事はこちら
- Decryptによる『Hardware Wallet Startup Cypherock Raises $1M to Skip Seed Phrases』の記事はこちら