ローカル特化のAIモデル流行の兆しか 仏Mistral、アラビア圏に特化したAIモデルを発表
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AIの次なる発展は、地域性に向かうかもしれない。
フランスのAIスタートアップMistralは2025年2月17日、アラビア語圏に特化した大規模言語モデル「Mistral Saba」を発表した。これまでAI開発は英語を用いたグローバルなモデルが主流だったが、地域特化型へと進化する新たな流れが生まれつつある。
日本でも、日本語に特化したモデルの研究が進んでおり、よりローカルなLLMが発展しつつある。
Mistral社が開発した地域特化型AIモデル
Mistral Sabaは、240億のパラメータを持つ比較的小規模なモデルでありながら、アラビア語コンテンツの処理において大幅に性能を向上させている点が特徴だ。
これまでのAIモデルの開発は、より大きなデータを学習させることで性能を向上させていたが、このモデルでは、データの大きさよりも、地域の言語や文化的文脈に特化した学習によって成果を上げている。
さらにMistral Sabaは、中東・南アジアの文化的な結びつきを反映し、タミル語やマラヤーラム語といった南インドの言語でも高い性能を示すという。地域間の文化的なつながりをAIが自然に学習できることを示す興味深い事例である。
Mistralがアラビア語特化のモデルを製作した背景には、経済的な狙いがある。MistralはAI企業として、アメリカのOpenAIやAnthropicなどとの競争を強いられ、ビジネス的には苦境に立たされてきた。その中で、よりローカルなLLMの開発にチャンスを見出したのである。
中東地域は急速にデジタル化が進む有望市場であり、現地企業からの優秀なAIモデルの需要は高まっている。米国や中国のAI企業に対する代替選択肢として、欧州企業であるMistralの立ち位置を強化する狙いもある。
オンプレミス展開も可能で、エネルギー、金融、医療などの機密性の高い産業での活用を視野に入れており、成長著しい中東でのシェアを確実に狙っていく方針だ。
日本における地域特化型AI開発の展望
ローカルLLM開発の流れは日本でも既に始まっている。
国立情報学研究所(NII)は2024年12月に、約1,720億のパラメータを持つ日本語特化型の大規模言語モデル「llm-jp-3-172b-instruct3」を発表した。このモデルは日本語のベンチマークテストにおいて、GPT-3.5を上回る性能を示し、日本語での利用に特化したAIモデルの可能性を実証している。
ほかにも、日本では多くの企業がLLMの開発に乗り出しており、国産で日本語が得意なAIモデルにかかる期待は高い。LLMをより「賢くする」ためには、より大量のデータが必要だが、単純なデータ量でOpenAIやGoogleといった企業に太刀打ちするのは難しい。
そうした状況で、特定の言語や文化に焦点を当てたローカルLLMは、市場で一定の需要を獲得する新たな戦略になると考えられる。
参考 : 本番迎える生成AI/LLM市場、国内ベンダーに期待集まる
Mistral SabaやNIIの取り組みは、AI開発の新たな方向性を示している。
グローバルな対応を目指すだけでなく、各地域の言語や文化に深く根ざしたAIモデルの開発が、今後ますます重要になっていくだろう。日本においても見られるこの潮流は、AI技術の民主化と地域に根ざしたイノベーションの可能性を示すものとして、今後も注目していく必要がある。
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