三重県、AI活用でクマ出没対策を強化　AIカメラと緩衝帯設置で人とクマの共存を目指す

三重県は、ツキノワグマの出没増加を受け、AI技術を活用した新たな対策を導入することを決定した。新年度当初予算に約970万円を計上し、AIカメラの設置や緩衝帯の整備、生息分布調査を実施する予定である。これらの取り組みにより、人とクマの共存を目指し、被害の防止を図る考えだ。

AIカメラの導入と出没時の対応策

三重県では、太陽光パネルと蓄電池を利用した「クマ検知カメラ」を設置する計画だ。
このカメラは、100メートル先までクマを識別する能力を持つ。カメラには高精度のAIアルゴリズムが搭載されており、クマの動きを解析し、誤検知を防ぐ仕組みも備えている。加えて、カメラの設置場所は、クマの出没が頻繁に報告されているエリアを中心に決定される予定だ。

クマを検知すると、警報器やライトが作動し、クマを追い払う仕組みである。さらに、出没情報はアプリや電子メールで市町に通知され、防災行政無線を通じて周辺住民にも注意喚起が行われる予定だ。この警報システムには、音声アナウンス機能も搭載されており、より効果的にクマを遠ざけることが期待される。

また、山林と集落の境界に草を刈り、緩衝帯を設けることで人とクマの「すみ分け」を図る。これにより、クマが人里に近づくのを防ぐ効果が期待される。緩衝帯の幅や長さについては、専門家の意見を取り入れながら、最適な形で整備する方針だ。モデル地域を選定し、緩衝帯設置に対する補助金も支出する計画が立てられている。

生息分布調査と今後の展望

ツキノワグマの生息分布や個体数の調査も開始する。
特に津市以北を対象に調査を行い、個体数管理の可否を判断する予定である。生息地の変化や移動パターンを分析するため、最新のドローン技術も活用し、効率的なデータ収集が行われる見通しだ。

昨年4月以降、県内で確認されたクマの出没は162件で、前年度の40件を大幅に上回り、過去最多となった。特に、大紀町では登山中の70代女性がクマに襲われる事故も発生している。これを受け、県内各地でクマ対策が急務となっており、住民の安全確保に向けた取り組みが求められている。

三重県の農林水産部は、これまでの住民への注意喚起に加え、クマを人里に近づけない対策を進めることで、被害を防ぎたいと考えている。
AI技術の活用や緩衝帯の設置、生息分布調査など、多角的なアプローチで人とクマの共存を目指す姿勢が伺える。今後、関係機関と連携を強化し、住民の不安を解消するためのさらなる施策が検討される予定だ。