カニエ・ウェスト氏が暗号資産に対し強い批判　市場に与える影響は

米国の著名なアーティストであり実業家でもあるカニエ・ウェスト氏（現在はイェと改名）が、暗号資産市場に対する強い批判を表明し、その影響が市場に波及した。彼は自身のトークン発行の可能性を完全に否定し、暗号資産がファンを食い物にするものであると発言。
このコメントによりウェスト氏のトークン発行を期待していた投資家は失望し、予測市場や関連する暗号資産の価値が急落する結果となった。

カニエ・ウェスト氏の発言と市場の動揺

ウェスト氏は2025年2月にソーシャルメディアを通じて自身の考えを明確に示した。「私はコインを発行しない」と断言し、暗号資産が誇大広告によってファンの資金を吸い上げる仕組みになっていると強く批判。この発言は瞬く間に拡散し、投資家や市場関係者の間で大きな波紋を呼んだ。

発言前、人気の予測市場であるポリマーケットではウェスト氏がトークンを発行する可能性は40%と見られていた。しかし彼の明確な否定発言を受け、その確率は10%まで急落した。また彼に関連するミームコイン（特定の文化やインターネット上のジョークをテーマにした暗号資産）の価値も急速に低下し、あるトークンは65%以上、別のトークンは89%もの価値を失った。この変動は著名人の発言が市場に与える影響の大きさを改めて示した。

さらにウェスト氏は、自身が「情熱を持ち知識のある分野」だけに取り組む意向を示し、トークン発行のために提示された200万ドルのオファーを断ったことも明かした。加えて暗号資産取引所コインベースのCEOであるブライアン・アームストロング氏とのコンタクトを希望している様子も見受けられる。

業界の反応と今後の展望

ウェスト氏の発言を受け、暗号資産業界の専門家や投資家の間ではさまざまな意見が交わされている。一部の専門家は「有名人によるミームコインやファントークンの流行が減速する可能性がある」と分析し、ウェスト氏の批判が今後の市場動向に影響を及ぼす可能性が高いと指摘している。
一方で「短期的な影響はあるものの、暗号資産市場の根本的な価値には変わりはない」と、市場の動揺は一時的なものだとする意見もある。

また、ウェスト氏が暗号資産の根本的な価値や技術にどの程度関心を持っているかも注目されている。彼の発言の中には特定の暗号資産技術を完全に否定するものはなく、むしろ現在の市場のあり方に対する疑問を投げかける内容が多かった。そのため、今後彼がブロックチェーン技術に関与する可能性も排除できない。

今回の騒動を受け、多くの投資家は改めて著名人の発言が市場に与える影響について再考することを余儀なくされている。今後も同様の発言が暗号資産市場全体の信用を損なう要因となるか、それとも市場の健全化に寄与するか、注目される。