クボタ、AIで水道管の破損と断水を予測 全国で新ソリューション提供開始

クボタは2025年5月29日、AI技術を活用した水道管路の破損予測および断水エリアの可視化を可能にする新ソリューションの提供を、全国の水道事業体向けに開始したと発表した。老朽化や自然災害による断水リスクを可視化し、対策優先度の判断を支援する。
AIで断水を未然に防ぐ予測システムを本格運用
クボタは全国の水道事業体に向けて、AIを活用した水道管路のリスク予測ソリューションの提供を開始した。対象となるのは、自然災害時の破損リスクを評価する「ハザード被害AI予測システム」と、破損に伴う断水の影響度を算出する「断水エリア予測システム」の2つである。
同社および子会社である管総研が水道事業体様から業務を受託し、システムを利用した診断・予測結果を提供する。
「ハザード被害AI予測システム」は、過去の大規模地震における被害データや地盤情報、水道管の構造データなどを学習させたAIモデルにもとづいて構築された。
従来の250メートル四方のメッシュ単位ではなく、管路単位でピンポイントに被害確率を算出できる点が大きな進化といえる。
さらに、断水シミュレーション「断水エリア予測システム」では、破損位置の違いによって断水戸数が大きく変動する可能性を事前に把握でき、更新工事の優先順位を定量的に判断できるようになる。
クボタはこれらの技術を、同社の管路総合プラットフォーム「KSIS PIPEFUL(ケーサスパイプフル)」上で提供している。
老朽化と財政難にAIが解を提示 社会インフラのDXへ
日本国内の水道管は全長約74万kmに及ぶが、そのうち23%が法定耐用年数の40年を超えて使用されており、更新率はわずか0.64%。全管路を更新するには150年を要するとされる。こうした状況下で、能登半島地震などの災害時に広範囲かつ長期間の断水が発生している現実がある。
しかし、全国の水道事業体の多くは財政難と人手不足という構造的課題を抱えており、十分な更新が進んでいない。
クボタが開発したAI予測システムは、こうした制約下でも「断水影響度」に基づき、更新すべき優先管路を見極められる点が特徴だ。断水影響度は、破損確率×断水戸数×復旧日数を用いて数値化され、生活への影響を定量的に評価できる。
また、管路の老朽度診断や自動工区割システムとの組み合わせにより、限られたリソースの中で効率的に更新計画を立案することが可能になる。
水道管が埋設されているために可視化が難しいという構造的課題に対し、AIとデータ解析によって“見える化”を実現し、住民や議会への説明責任も果たしやすくなると期待される。
クボタは今後、スマート水道工事システム「PIPROFESSOR(パイプロフェッサー)」とのデータ連携を通じ、計画から施工まで一貫したインフラDXの構築を目指す方針を示している。