シスコ予測、2028年までにカスタマー対応の過半がAIに 一方で人間の役割も重要視

現地時間2025年5月27日、米Cisco Systemsは、2028年までにIT業界のカスタマーサポート業務の過半数がエージェント型AIによって対応されるようになるとのレポートを発表した。
回答者の9割以上が「AIによる応対はより効率的でパーソナライズされる」と回答しており、AI導入の潮流が鮮明となった。
AIエージェントがカスタマー対応の主役に台頭へ
Cisco Systemsは、「The Race to an Agentic Future」と題したレポートを発表した。
レポートは30カ国・約8000人のビジネスリーダーを対象に調査したもので、すべての回答者がBtoBテクノロジーサービスと日常的な接点を持つ層で構成されている。
レポートによると、テクノロジーベンダーのカスタマーサービスにおけるAI活用が今後急速に拡大する見通しである。
調査結果によれば、2028年までにカスタマーサポート業務の68%がエージェント型AI(※)により自動化される可能性があると予測されている。
さらに93%が、AI導入によって応対がパーソナライズされ、効率も高まると回答した。
AIの導入が単なる業務の効率化にとどまらず、顧客体験の質的向上につながるとの期待が高まっている。
ただし、これによって人間の役割が不要になるというわけではない。
回答者の89%は「人間による関与は不可欠」と回答しており、96%は「人間同士のやり取りが非常に重要」と強調している。
人間とAIのハイブリッド型の運用が主流になると考えられる。
※エージェント型AI:
ユーザーと自然言語で対話し、指示の理解・実行・判断を自律的に行う人工知能の一種。カスタマーサポートやパーソナルアシスタントなどに応用される。
導入の遅れは信頼低下のリスク 倫理的AI運用がカギ
レポートは、エージェント型AIを適切に導入できなかった企業が直面するリスクについても警鐘を鳴らしている。
調査回答者の多くは、AI導入の遅れや運用ミスが顧客満足度の低下や企業イメージの悪化につながると指摘。
信頼関係の構築が困難となり、顧客離れを招く恐れがあると警戒している。
一方で、AI導入に成功した企業は競争優位に立てるとの見方も強い。
回答者の81%が、「AIを活用したカスタマーサービスで成果を出す企業は、競合よりも優れた市場地位を築ける」と回答している。
AI戦略は顧客対応だけでなく、『企業全体の競争力に直結するもの』と位置付けられつつあることが窺える。
その一方で、AIによる個人情報処理の増加にともない、データガバナンスへの関心も高まっている。
99%の回答者が「AI導入時にはデータ保護や倫理的運用の方針を明示すべき」としており、透明性ある運用体制の構築が重要視されているようだ。
今後は技術力に加え、信頼構築と説明責任を果たす姿勢が、ベンダー選定の重要な基準となりそうだ。