エヌビディア、中国市場向けに「ブラックウェル」ベースの低価格AIチップ投入へ H20の半額水準に

2025年5月24日、ロイターが報じたところによれば、米エヌビディアは中国向けに新たな人工知能(AI)チップセットを投入する計画だという。
既存の中国向けモデルH20に比べ価格を大幅に抑えた仕様となり、早ければ6月にも量産を開始する見通しである。
ブラックウェルベースの廉価版、H20の価格を大きく下回る
複数の関係者によると、エヌビディアが開発中の新型AIチップは、最先端の「ブラックウェル」アーキテクチャをベースにしつつ、価格を6,500~8,000ドル程度に設定する方針だ。
同社の既存中国向け製品「H20」(1万~1万2,000ドル)に比べ、半額近い水準である。
低価格を実現するために、従来よりも高性能な高帯域幅メモリ(HBM)は用いず、一般的なGDDR7メモリを採用する。
また、TSMCの高度なパッケージング技術であるCoWoS(※)も使用しない構成となっている。
エヌビディアの広報は「選択肢を検討中」としつつも、中国市場への規制が強まる中での戦略的対応の一環とみられる。
※CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate):
TSMCが提供する高密度・高性能な半導体パッケージ技術。複数チップを1つの基板上に集積し、高速なデータ転送と省スペース化を実現する。
米中対立下での対応策 市場維持と規制回避の狭間で
中国はエヌビディアにとって依然として重要な市場だが、米国政府の輸出規制により、同社の中国市場シェアはかつての95%から約50%へと急落した。
AIチップの覇権を巡っては、中国国内のファーウェイなどが追い上げを強めている。
今回の廉価版チップ投入は、米政府の規制に抵触しないスペック構成とすることで、中国への販売を継続可能とする狙いがあると考えられる。
高性能モデルでは得られない市場の維持を、規制の網をかいくぐる形で模索しているのだ。
一方で、機能を削減したチップが競争力を維持できるかどうかは不透明であり、ユーザーからの評価や中国側の対抗製品との性能比較が今後の鍵を握る。
エヌビディアにとっては、米中技術摩擦の板挟みの中での苦渋の選択といえる。