PagerDutyとAWSが戦略的協業を更新 生成AI統合でIT障害対応を高度化へ

2025年5月21日、米PagerDutyは、Amazon Web Services(AWS)との戦略的協業契約(SCA)を更新したと発表した。自社製品にAWSの生成AIを統合することで、インシデント管理の迅速化と自動化をさらに強化する狙いがある。
PagerDuty製品にAWSの生成AIが本格統合
デジタル運用管理を手がけるPagerDutyは、AWSとのグローバルな戦略的協業契約(SCA)を更新し、両社の連携をさらに強化すると発表した。
今回の合意により、PagerDutyの主力製品「PagerDuty Operations Cloud」に、AWSの先進的な生成AI機能が本格的に組み込まれることとなる。
PagerDuty Operations Cloudは、異常検知から対応、復旧までのインシデント管理を一貫して自動化するAI基盤のプラットフォームである。生成AIの導入により、担当者の特定、原因の推定、対応案の提示までの時間が大幅に短縮される見込みだ。
両社は2013年から提携を開始しており、現在までに6000社以上の共通顧客にサービスを提供してきた。
2022年にはAWS Systems Managerの「Incident Manager」との連携も実現し、複雑化するIT運用への対応力を着実に高めている。
また、2024年以降は、生成AIの活用を本格化させている。
Amazon BedrockやAmazon Q BusinessなどのAIサービスとの連携により、インシデント管理プロセスの精度と安全性を両立する取り組みが進められている。
IT障害復旧に変革 複雑な運用にもAIが対応
今回のSCA更新により、PagerDutyはAWSのAI技術を活用した新たな運用支援機能を実装する。
特に注目されるのは、Amazon Q Businessの検索・分析機能「Amazon Q index」との統合である。これにより、社内外の多様なデータソースから情報を横断的に検索・分類し、迅速なインシデント対応が可能となる。
さらに、PagerDutyのAIアシスタント「PagerDuty Advance」では、Amazon BedrockとClaude(※)を基盤に、担当者の負担を軽減する対話型UIが提供される。
これにより開発者は、よりクリエイティブな業務に専念できると思われる。
実際に、旅行業大手TUIは、PagerDutyとAWSを統合した運用体制を導入後、インシデントの復旧時間を約30%削減したと報告している。こうした導入事例が増えれば、金融、製造、ホスピタリティーなど、他業界への展開も加速するだろう。
一方で、生成AIの導入に伴うリスク管理も不可欠である。
誤った判断による二次被害や、過度な自動化による現場の判断力低下といった懸念も存在するため、セキュリティやガバナンスと両立できるかが、今後の鍵となるだろう。
※Claude:Anthropic社が開発した対話型AIモデル。自然言語理解に優れ、企業向けの業務支援などに応用されている。