NEC、映像AI技術で製造現場の手作業を自動分析するデジタルツインソリューション提供

2025年5月21日、日本電気株式会社(NEC)は、映像AI技術を活用して製造現場における手指を使った作業を識別・可視化・分析する「NEC Digital Twin ヒト・作業ログ分析ソリューション」の販売を開始すると発表した。
NECが映像AIで人の動作を識別・分析する新技術
NECが提供を開始する「NEC Digital Twin ヒト・作業ログ分析ソリューション」は、独自の映像AI技術を活用し、製造現場の作業をデジタル空間に再現するデジタルツイン(※)型のソリューションである。
特に、人の手指による細かい作業を対象に、事前の部品登録や大量の教師データを必要とせずに識別可能という点が特徴だ。
同ソリューションでは、映像から作業の開始や終了、さらには「電動ドライバーでネジを締める」や「マイクをはめ込む」など数十種類の作業を自動識別し、作業順序や手順ミスの検出も行う。
品質に影響を与える手順の逸脱があればリアルタイムにアラートを発する機能も備えており、現場の作業品質向上に貢献する構えだ。
2024年9月には、NECプラットフォームズの製造現場で実証実験が行われ、作業改善によって約4%の生産性向上が見込まれることが確認された。
すでに自動車、医療機器、計測機器など複数の業界で先行導入が進んでいる。
※デジタルツイン:現実空間の人や物、環境の状態をセンサーや映像などで取得し、デジタル空間上にリアルタイムで再現する技術。産業分野での活用が進んでいる。
人の作業をデータ化する新潮流 技能継承と経営判断に寄与
今回のNECのソリューションは、作業現場の可視化という既存の課題に応えるだけでなく、製造業全体の変革を促す可能性がある。
従来は把握が困難だった作業の順序や動作の精度が可視化されることで、作業者間の技能差を明確にし、トレーニングに活用できる点が注目される。
手の軌跡を録画・分析する機能もあり、熟練作業者の動きをベンチマークとして比較することで、スキルアップや技術継承を支援することが可能になる。
また、作業ごとのサイクルタイムを自動計測できるため、生産性の高低を個別に検証することができ、問題箇所の特定にもつながる。
さらに、GPUではなくCPUベースの機器を活用することでコストを抑え、より多くの現場への導入を後押しする設計も評価される。価格は税別150万円からと設定されており、今後3年間で200件の販売を目指すという。
NECのこの取り組みは、作業現場の「暗黙知」を可視化し、経営層が定量的なデータに基づいた判断を行うためのインフラ構築とも言える。現場と経営を繋ぐ新たな橋渡しとして、他業界への波及も期待される。