Google Glassの夢が現実に近づく 生成AI搭載の「Android XR」がスマートグラス体験を革新

2025年5月21日、米Googleは開発者向けイベント「Google I/O 2025」にて、生成AI「Gemini」を搭載した新OS「Android XR」の具体的な利用例を公開した。10年以上前に構想された「Google Glass」の理想が、現実味を帯びて再浮上している。
Android XRが示したスマートグラスの次なる地平
Googleは2024年12月に発表したXRデバイス向けOS「Android XR」の進展を、2025年5月21日のGoogle I/Oで披露した。今回はスマートグラスにおけるGeminiの統合によって、過去のGoogle Glassでは到達できなかったユーザー体験の革新を目指す姿勢を明確にした。
今回紹介されたAndroid XR搭載のスマートグラスは、レンズ内のディスプレイや音声入出力機能を備え、スマートフォンと連携してアプリケーションをハンズフリーで操作可能となる。Geminiの支援により、ユーザーが目にした情報をリアルタイムで理解・解析し、適切なタイミングで通知やアシストを行うことができる。
会場では、翻訳字幕をリアルタイムで表示するデモや、視覚情報にもとづいて予定を提案する機能などが紹介され、実用性の高さが強調された。
これにより、「日常に溶け込むAIアシスタント」としてのスマートグラス像が、より現実的なものとして提示されたかたちだ。
さらに、Googleはデザイン性にも配慮し、Gentle MonsterやWarby Parkerといったファッションブランドと提携。日常的に身に着けたくなるような外観のスマートグラス開発も進行中である。
AIが進化を加速する一方、ハード面の課題もなお残る
生成AIの進化がスマートグラスの可能性を押し広げているのは間違いない。Geminiはユーザーの状況を認識し、シームレスに情報提供することで「考えるウェアラブル」とも言える体験を提供しつつある。
今後、音声コマンドや視線検知といったUI(ユーザーインターフェース)の洗練が進めば、操作性のハードルもさらに下がると予想される。
また、GoogleはSamsungと共同でリファレンスハードウェアや開発者向けツールの整備を進めており、2025年後半には開発者がAndroid XR対応アプリを本格的に制作できる環境が整う見込みだ。エコシステムの拡充が進めば、スマートグラスの普及も加速する可能性がある。
一方で、AIによる支援を可能にするには、高性能なSoC(※)や高速通信、長時間駆動のバッテリーといった高密度な技術の搭載が不可欠だが、眼鏡型という小型形状の制約が大きな壁となる。
Googleは今回、具体的なハードウェア仕様や性能面についての言及を避けたが、この沈黙が示す通り、まだ技術的なブレイクスルーには至っていないと考えられる。
さらに、日本市場での展開は現時点で未定とされており、国内ユーザーがこの先端体験にアクセスできる時期は不透明である。
とはいえ、Googleが再びスマートグラスという市場に本腰を入れ始めたことで、他社の動きも含めた業界全体の加速が期待される。
※SoC:System on a Chipの略。プロセッサや通信機能などを1つのチップに集約した高集積電子回路。