NVIDIA、小型AIスパコン「DGX Spark」「DGX Station」を発表 台湾メーカーと開発体制を拡充

現地時間2025年5月19日、米NVIDIAは台湾の主要システムメーカーと連携を拡大し、個人向けAIスーパーコンピューター「DGX Spark」と「DGX Station」を構築することを発表した。
小型かつ高性能な設計により、生成AIや大規模モデルのローカル開発環境を支援する戦略的な取り組みとして注目される。
Grace Blackwellを核とする高性能AI端末が個人開発を加速
今回発表された「DGX Spark」と「DGX Station」は、NVIDIAの最新プロセッサ「Grace Blackwell」シリーズを搭載し、AI開発者やデータサイエンティスト向けに最適化された端末である。
DGX Sparkは最大1ペタフロップス(PFLOPS)の演算能力と128GBの統合メモリーを有し、PyTorchやJupyterなどの開発ツールを標準でサポートする。
一方、DGX Stationは「Grace Blackwell Ultra Desktop Superchip」を採用し、最大20PFLOPSのAI処理能力を持つハイエンド機だ。
784GBのメモリーと800Gb/sの高速接続に対応し、単一ユーザー向けの高性能ワークステーションとしても、複数ユーザーで共有する計算ノードとしても機能する。
両機種とも、NVIDIA独自のAIスタックを統合した「DGX OS」が搭載され、NIMマイクロサービスやBlueprintなどのエンタープライズ向けAI機能にもアクセス可能だ。
DGX Sparkは7月、DGX Stationは2025年後半に発売予定である。
台湾勢との連携で“AI民主化”を加速 高性能と普及性のジレンマに挑むNVIDIA
今回のプロジェクトには、台湾のAcer、GIGABYTE、MSIといった有力システムメーカーが新たにパートナーとして参画している。
これにより、NVIDIAは単なるチップ供給にとどまらず、ハードウェア設計からシステム構築、ソフトウェア最適化までを包括する総合的なAIエッジソリューションを市場に提示した格好だ。
一方で、ハードウェア価格の高さがネックになる可能性がある。
性能重視の設計ゆえに一般消費者層への普及は限定的と見られ、対象はあくまでプロフェッショナル層にとどまる。
AIの民主化とパーソナライズ化が進行する中で、今回のDGX Spark/Stationは、個人の研究者や中小規模の開発拠点に新たな道を開く起点となるだろう。
ただし、競合勢力も黙ってはいないだろう。
AMDのMI300やIntelのGaudi系も進化を続けており、今後はエコシステム全体の完成度が鍵を握る展開になると思われる。
NVIDIAにとっては、ソフトウェアアップデートによるユーザビリティの継続的向上と、価格性能比の最適化が次なる課題となるはずだ。