電通の「AI For Growth 2.0」 仮想ペルソナ1億人生成とアイデア支援を強化

2025年5月19日、電通グループは独自AI戦略「AI For Growth 2.0」を発表した。
1億人規模の仮想ペルソナ生成やビジュアルアイデア自動生成など、マーケティング業務のAIネイティブ化を推進し、創造性と業務効率の両立を目指す。
1億人分の仮想ペルソナ生成とアイデア創出をAIで実現
電通グループは、AIを活用してマーケティング業務を根本から変革する「AI For Growth 2.0」を始動した。
今回新たに開発した独自のAIモデルは「People Model」と「Creative Thinking Model」の2つだ。
People Modelは、電通が独自に保有する大規模な価値観・意識調査データ(年間約15万人規模)をファインチューニングしたものである。これにより、1億人規模の高精度な仮想ペルソナを生成できる。
従来のような年齢・性別などの限定的属性にとどまらず、多層的で多人数のペルソナ群を対象としたアンケートや仮想インタビューが可能になり、マーケティングの仮説検証スピードと質が格段に向上する。
一方、Creative Thinking Modelは、東京大学AIセンターとの共同研究を基盤に、クリエイターの発想プロセスを学習したAIである。広告コピー生成ツール「AICO2」の進化形とも言える本モデルでは、視覚的なアイデア創出までをAIが担うことができるようになった。
両モデルは現在特許出願中であり、電通グループが開発した各種AIツールと連携し、統合型AIエージェントとしての展開が進められている。
AI×創造性の両立へ 人材育成と業務高度化も加速
AIの高度化が進むなかで、電通グループはAI導入による「創造性の低下」という懸念に対しても、独自のアプローチで対応している。単なる自動化ではなく、クリエイターやプランナーの思考様式を学習させたCreative Thinking Modelにより、アウトプットの質を担保しつつ発想支援を行う構造を整えた。
さらに、People Modelによる高速なアイデア検証は、従来のリサーチに比べて圧倒的なコスト削減と時間短縮をもたらすと見込まれており、意思決定の精度とスピードの向上が期待される。
加えて、グループ全体でのAI人材育成にも注力。2024年11月時点で、電通グループ内の39社・1114人が「ジェネラリスト検定(G検定)」に合格しており、AIリテラシーの社内浸透を進めている。これにより、外注に依存しない内製化体制が強化され、より柔軟かつ迅速なマーケティング施策の実行が可能になる。
今後は、同モデル群がクライアント企業向けにどのような形で提供されるかが注目点となる。現在は社内実装が中心だが、外部展開が本格化すれば、広告代理店業務の標準的なワークフローそのものが再定義される可能性もある。
特に、調査設計や仮説検証の短期化は、競争環境が厳しさを増す企業にとって大きな武器となりうるだろう。