AIで“ゴッホ化”された白フクロウ画像が波紋 ギャラリー投稿に著作権疑問の声

2025年5月13日、東京都中央区のギャラリー「翠波画廊」がSNSプラットフォームX(旧Twitter)に投稿したAI生成画像が、大きな議論を呼んでいる。
ネットミームとして有名な白いフクロウの写真をゴッホ風に加工したものが投稿されたが、元ネタの写真家からの許可がなかったことが判明し、著作権の在り方とAI技術の扱いを巡って意見が分かれている。
「エッホエッホ」投稿が生んだ熱狂と批判 AIと著作権の境界が曖昧に
問題となっているのは、翠波画廊が5月13日にXへ投稿した1枚の画像だ。
ゴッホ風のタッチで描かれた白いフクロウが描かれており、添えられた「エッホエッホ」というフレーズも相まって、ネットミームとして瞬く間に拡散された。
投稿は34万を超える「いいね」と3万6000以上のリポストを集め、国内外のユーザーの注目を集めることとなった。
だが、この画像には元となる実在の写真があった。
オランダの写真家ハニー・ヘーレ氏が撮影した作品である。翠波画廊は、この写真をAI画像生成ツールで加工し、「ゴッホ風」として公開したが、投稿後に著作権上の問題が指摘された。
ヘーレ氏は、自身の作品をファンアートとして楽しむことには理解を示しつつも、商業目的での利用については事前の許可を求めている。しかし、翠波画廊側は「今回の投稿は商業目的ではない」として、事前の許可を取っていなかったと明かした。
5月15日、同画廊は謝罪文を投稿し、AI生成画像に対する賛否があることを認識しているとした。現在はヘーレ氏への連絡を試みており、返答を待っている状況とのことだ。
AI画像はファンアートか著作侵害か 利用ルールの明確化が急務に
今回の件は、単なるSNS上の話題にとどまらず、生成AIの扱いをめぐる法的・倫理的な議論に火をつけた。
肯定的な意見も多く、クリエイティブな挑戦として受け入れる層も少なくない。
一方で、「画廊が画像生成AIを使うのか」といった批判的意見も根強い。
現在の日本の著作権法では、AIが加工した画像が原作の「翻案」(※)にあたるかどうか、明確な基準が存在しない。さらに、「商業目的」の定義もあいまいで、SNS投稿が集客やブランド価値の向上を意図している場合、商業行為と見なされる可能性がある。
今回の翠波画廊のように、企業アカウントが拡散力を利用して投稿を行うケースでは、なおさら慎重な判断が求められる。
今後、生成AIを活用した作品がますます増加するだろう。
だが、そのたびに著作権者との摩擦が起こるようでは、表現の自由と権利の保護が衝突し続けるだけだ。
利用ルールの整備と透明性の確保が、今後のAI活用において重要となるだろう。
※翻案:原作を元に内容や形式を変更して新たに制作された二次的著作物のこと。著作権法では、翻案には原作者の許諾が必要とされている。