米上場の中国系アパレル企業アデンタックス、8億ドル相当のビットコイン・トランプコインなど取得へ

2025年5月15日、米ナスダックに上場する中国系アパレル企業アデンタックスグループが、最大8,000BTCと「トランプコイン」を含む仮想通貨(推定総額約8億ドル)取得の協議を進めていると発表した。
仮想通貨取得の意図と背景にあるブロックチェーン戦略
今回明らかになったアデンタックスグループの動きは、同社が進めるブロックチェーン戦略の一環として位置づけられている。
発表によれば、アデンタックスは最大8,000ビットコイン(BTC)および「オフィシャル・トランプ(トランプコイン)」を含む主要仮想通貨を取得する方針で、取引総額は約8億ドル、日本円にしておよそ1,200億円に相当する。
取得の資金は、同社が発行する普通株式によって賄う予定だが、現段階では最終合意には至っていない。
この計画に対し、アデンタックスのCEOホン・ジーダ氏は「当社の広範なブロックチェーン戦略を支えるものであり、戦略的投資家の導入と仮想通貨エコシステムへの関与を促進する」と説明している。加えて、広く認知された高流動性銘柄を取得することで、企業のバランスシートの強化を狙う方針だ。
交渉相手は約8,000BTCを保有する仮想通貨業界の有力者とされ、豊富な知見とネットワークを備えている。この保有者を新たな株主として迎えることで、アデンタックスは仮想通貨関連のネットワーク拡充を目指すと見られる。
同社は衣料品の製造と物流、不動産事業を統合的に手がける企業で、ナスダックには2022年に上場済み。近年では、業態の多角化に加えて、デジタル資産分野への進出も加速していることが今回の発表からも読み取れる。
Web3領域への橋頭保か、今後の展望と業界へのインパクト
アデンタックスの動きは、単なる仮想通貨の資産取得にとどまらない。背景には、Web3領域における主導権の確保と、企業価値の再評価を狙った戦略的意図があると見られる。
特に注目すべきは、仮想通貨保有者を戦略投資家として株主に迎えることで、ブロックチェーン領域の知見やネットワークを内部に取り込もうとしている点だ。
市場全体としては、ビットコインの取得が企業戦略の一環となる事例が増えており、今回のような大規模取得計画は投資家心理にも影響を与える可能性がある。
また、トランプコインという特異な銘柄の選定にも注目が集まる。これは米国の政治情勢やデジタルアセット市場の話題性を意識した側面もあると推測され、マーケティング的効果を含んだ選択とも言える。
一方で、株式発行による資金調達は希薄化リスクを伴うため、短期的な株価への影響は否定できない。だが、中長期的には仮想通貨の価格上昇やWeb3事業とのシナジーが見込めるならば、ポジティブに評価される余地はある。
この一連の動きが、他の伝統的企業にも波及する可能性は高い。すでに米テスラやストラテジーなどがビットコイン保有に踏み出しており、アデンタックスのような非IT系企業の参入は、業界構造の転換を示唆する兆候として捉えられている。