アリババのECアプリ「TAO」、AIコーディネート機能で日本のファッション市場に本格進出

2025年5月13日、日本国内向けに展開されているアリババの越境ECアプリ「TAO」が、AIファッションコーディネートアシスタント機能を新たに導入した。
画像認識やパーソナライズ提案を駆使し、日本の消費者に新たな買い物体験を提供することが狙いだ。
「TAO」のAIが変えるファッション購買体験
アリババグループの日本法人・淘宝日本が展開する越境ECアプリ「TAO」は、中国最大級のECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」の知見と技術を活かして開発された。
現在、日本市場向けに最適化されたコストパフォーマンスを武器に、1000万点を超える商品群を誇る。
特にアパレルジャンルでは500万点以上の品揃えを持ち、日々約1万点の新商品が追加される。
新たに実装された「AIファッションコーディネートアシスタント」は、アリババの独自開発AI「Qwen(※)」を基盤としている。
ユーザーが撮影した画像から類似アイテムを瞬時に提示する画像認識技術を持ち、さらに体型、好み、購買履歴といった個人データを多角的に解析する。
また、「AIライフアシスタント」「AI趣味マスター」も導入し、ユーザーごとに最適なスタイル提案を行うとしている。
この機能が差別化されている点は、単なる検索補助ではなく、購買体験自体の再構築にある。
AIの導入により、ECにありがちな“選択疲れ”を軽減し、ユーザーとの接点を深める仕組みが整ったと言える。
※Qwen(キューウェン):中国アリババグループが開発した大規模言語モデル。自然言語処理だけでなく、画像認識や音声認識にも対応し、多言語や多モーダルな対話に強みを持つAI基盤技術。
ポップアップから生活提案型へ
「TAO」は単なるアプリ内施策にとどまらず、リアルとデジタルを横断するプロモーション展開を強化している。
5月6日から15日には「TAOファッションウィーク」をアプリ内で開催し、多様なスタイルを提案。
5月16日からは東京・表参道にて「最高のクローゼット TAO」をテーマにしたポップアップストアを展開予定だ。
来場者はAIコーディネート機能のデモ体験や抽選企画を通じて、サービスへの理解を深めることができる。
こうした複合的なマーケティング戦略により、「TAO」は単なるECアプリから、生活全体に提案を行う“ライフスタイルプラットフォーム”への進化を模索しているようだ。
ただし、こうした展開が成功するかどうかは、AIの精度と倫理的配慮、そしてローカライズの巧拙にかかっていると思われる。
AIの判断がどれほど日本市場の感性を理解できるか、そしてそのアルゴリズムが偏見なく多様性を担保できるかが問われる段階に来ているのではないだろうか。
プライバシー保護がなされているかどうかも、今後の検証が必要になっていくだろう。
AI技術の進化は、越境ECのボトルネックであった「現地ニーズの把握」という課題を解消しつつある。
AIによるパーソナライズと高品質路線の融合は、今後のスタンダードとなる可能性がある。
今後、他社ECとの連携や、オフライン施策のさらなる展開に注目が集まりそうだ。