米商務省、ファーウェイ製AI半導体を「世界のどこでも規制違反」認定 対中技術封じ込め強化へ

2025年5月13日、米商務省は中国ファーウェイが開発した人工知能(AI)半導体「Ascend」の使用について、「世界のどこであっても」米国の輸出管理規則(EAR)違反に該当するとの新指針を発表した。米国の対中技術封じ込め戦略がさらに一段と強化された形だ。
ファーウェイ製AIチップ、全世界での使用が規制対象に
米商務省の産業安全保障局(BIS)は、ファーウェイが開発・展開するAI半導体「Ascend」シリーズに対し、世界中どこで使用されても米国の輸出管理規則に違反するという見解を公式に示した。これにより、米国由来の技術や知的財産が間接的に利用される形でも制裁対象となる可能性が強まった。
BISは、米国製AI半導体が中国のAIモデルの学習と推論に利用されることに伴う潜在的影響についても、国民に周知する方針だという。
ファーウェイはこれまでにも米国の制裁措置に直面しており、最新スマートフォンやAI向け高性能チップの開発で多くの制限を受けてきた。
だが今回の新方針は、Ascendシリーズの海外市場での展開すら事実上難しくする内容であり、同社の半導体戦略にとって大きな痛手となる。
昨年11月のブルームバーグの報道によれば、ファーウェイは米エヌビディア製GPUに匹敵する次世代のAscendチップ2種類を設計していた。しかし、最先端の7ナノメートル技術に対応する製造設備は、米主導の規制により依然として確保困難なままである。
中国AI産業にさらなる逆風 米の輸出規制が再構築フェーズへ
今回の米商務省の新指針は、単なるファーウェイ1社に対する制裁強化にとどまらず、中国全体のAI産業への戦略的圧力として位置づけられる。米国はAI技術の軍事転用や監視用途への悪用を警戒しており、その一環としてAI半導体の輸出統制を厳格化している。
さらに注目すべきは、バイデン前政権下で導入されたAI向け半導体輸出に関する規制を撤回する方針も同時に発表された点だ。この旧規則は、同盟国を含む複数国との関係を悪化させる可能性があるとして、米国内外の企業からも批判が強かった。商務省は声明で「外交的信頼を損ねていた」とし、代替となる新たな規則を今後発表する意向を示した。
この動きにより、エヌビディアやオラクルといった大手米企業にとっても、より明確な輸出判断基準が整備される可能性が高い。
一方で、中国企業は今後、自国開発によるチップ製造の内製化や、他国との独自サプライチェーン構築をさらに加速させるとみられる。
複数の関係筋によれば、トランプ政権はより柔軟なアプローチを検討中で、各国ごとの交渉によって技術移転や供給網を個別管理する戦略にシフトする可能性もあるという。
これにより、今後の米中対立は一段と複雑化する展開が予想される。