アイシンのAI対話エージェント「Saya」、大阪万博2025に期間限定で登場

アイシンが開発したAI対話エージェント「Saya」が、大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」に、5月13日から19日まで期間限定で登場することが明らかになった。
画像・音声・言語処理を融合したAIキャラクター「Saya」、来場者と共感的に対話
「Saya」はフル3DCGで構成されたビジュアルを持ち、まるで生身の人物のような自然な存在感を醸し出すAIエージェントだ。
搭載されているのは、画像認識AI、音声解析AI、そして大規模言語モデル(LLM)という3つの中核技術である。このうち特に注目されるのがアイシンが得意とするカメラ画像認識技術である。来場者の表情や服装、声のトーンといった非言語情報をリアルタイムで解析し、現在の感情や状態を理解したうえで自然かつ共感的な応答を生成する。
日本語と英語のバイリンガル対応も備えており、国内外から集まる多様な来場者とのスムーズなコミュニケーションが可能になる。
雑談はもちろん、質問応答や展示案内といった多岐にわたる機能が備えられており、従来の情報提供の枠を超えた「対話によるナビゲーション体験」を実現している。
このプロジェクトはアイシンが主導する形で、ソフトウェア開発を得意とするIdein(イデイン)と複数の教育機関との連携により共同開発された。技術面だけでなく教育現場の知見を取り入れることで、より人間らしい応答や文脈理解が実現されていると考えられる。
万博会場では大阪商工信用金庫による展示企画内に3台の「Saya」が配置され、来場者に対して計8つの展示コンテンツを案内する役割を担う。
訪問者との会話を通じて関心の高い分野を判別し、最適な展示へと導くことで、会場全体の回遊性とエンゲージメントの向上が狙いとされている。
「Saya」導入が示すAIによるリアルイベントの可能性と今後の展望
万博という国際的なイベントにおいてAIキャラクターが「案内役」として活躍する事例は、リアルイベントにおけるAI活用の新たなベンチマークとなるだろう。従来の静的な看板や一方通行の案内表示では得られなかった、「感情に寄り添うインタラクション」が可能になる点は、大きな変化であるといえる。
技術的には、各種AIモジュールを統合し、1体のキャラクターとして一貫した対話体験を提供する設計に注目できる。音声・映像・言語という異なる情報のリアルタイム処理が求められる中で、その応答精度や動作スピードがどこまで実用に耐えるかも注視されている。
また、期間限定であるがゆえに収集されるユーザーデータやフィードバックは、今後のAIエージェントの進化にとって極めて貴重な情報資源となるだろう。
今後は、「Saya」のような対話型エージェントが、今後商業施設や自治体の窓口、観光地、さらには教育・医療といった分野へと展開されることも十分に考えられる。
AIの社会実装が進むなかで、現実世界での人とAIの接点を増やすきっかけとして、今回の大阪万博での試験導入には注目が集まるだろう。