東京システムハウス、COBOLの課題に生成AIで挑む「AIベテランエンジニア」提供開始

東京システムハウス株式会社は2025年5月13日、COBOLに関する問題解決を支援するAIサービス「AIベテランエンジニア」の提供を開始したと発表した。仕様書作成とチャット型Q&Aの2機能を備え、老朽化したシステムの可視化・維持管理に貢献する狙いだ。

COBOLのレガシー問題に生成AIで挑む、2機能一体の新ソリューション

東京システムハウスが発表した「AIベテランエンジニア」は、COBOL（※）コードの仕様書作成と、チャット形式での質疑応答という2つの機能を一体化した生成AIサービスである。

「仕様書作成システム」では、ユーザーがCOBOLコードをアップロードするだけで、プログラム構成図、業務ロジックのフローチャート、データ構造図といったドキュメントが自動生成される。
この仕組みは、同社の「メインフレーム・マイグレーション・サービス（MMS）」で蓄積されたノウハウが反映されており、COBOL特有の資産解析にも対応している。

一方の「質疑応答システム」は、Google ChatとVertex AI Agent Builderを組み合わせたチャットUIを採用。ユーザーが入力した質問に対して、AIが仕様書や社内ナレッジベースをもとに適切な回答を返す。
RAG（検索拡張生成）を用いたこの機能により、コードの修正提案や不具合の原因調査も可能となっており、エンジニアの負担軽減が期待される。

※COBOL：「COmmon Business-Oriented Language（共通事務処理向け言語）」の略で、主に企業の事務処理や会計業務に特化したプログラミング言語。1959年にアメリカで開発され、現在でも金融機関や政府機関などで多く使われている。

「属人化」の解消へ、維持コストの削減とナレッジ継承を加速か

今回のリリースは、レガシーシステム（※）に悩む企業にとって、技術継承の現実的な突破口となる可能性がある。

COBOLを中心とした既存のシステム群は、仕様書が存在しない、あるいは現行仕様と乖離しているケースも多く、開発者の頭の中にしかない“暗黙知”が業務継続のボトルネックとなってきた。
こうした属人化を排除し、ナレッジの構造化と検索性向上を自動で実現する点が、このサービスの核心と言える。

東京システムハウスは、これまでにも企業の基幹系システムの資産調査や移行プロジェクトを数多く手がけてきた。とはいえ、AIの出力の信頼性や、複雑な業務ロジックの完全な理解にはまだ課題が残るのも事実である。
運用現場との連携を深めつつ、AIの継続的な精度向上がカギを握るだろう。

※レガシーシステム：長年にわたり企業の業務を支えてきたが、技術的には時代遅れとなったシステムのこと。保守が困難で、技術者の確保が課題となるケースが多い。