NVIDIA・AWS・AMDがサウジHUMAINと提携 6000億ドル規模のAI戦略が始動

米国のNVIDIA、Amazon傘下AWS、AMDの3社は2025年5月13日(現地時間)、それぞれサウジアラビアの新興AI企業「HUMAIN」との戦略的提携を発表した。これはサウジ政府が主導する6000億ドルの米国投資の一環であり、世界的なAI競争の新たな局面を示している。
未来型AI国家を目指すサウジと米テック企業の結節点
サウジアラビアは国家戦略「Vision 2030」に基づき、脱石油依存を加速するためAI技術への巨額投資を進めてきた。その中心に据えられたのが、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が関与するHUMAINである。同社は、AIを中核とする新産業育成の拠点として12日に設立が発表された。
今回の提携により、NVIDIAはサウジ国内に大規模なAI工場を設置する計画で、GPUを中心とした演算資源を提供する。併せて、Omniverse(※)を用いた人材育成プログラムも展開し、AI・ロボティクス分野の技術力を底上げする構えだ。
AWSは50億ドルを超える投資で「AIゾーン」の整備を進める。Amazon SageMakerやAmazon Bedrockといった最新の生成AIサービスを提供し、10万人規模のクラウド・AI人材育成を視野に入れる。スタートアップへの支援も同時に進行しており、ビジネスエコシステムの形成が本格化しつつある。
一方、AMDは100億ドル規模の提携を通じ、米国とサウジアラビアをつなぐAIコンピューティングセンターのネットワーク構築に動く。Instinct GPUやEPYC CPUなどの高度な演算技術を提供し、HUMAINのAI開発基盤を強化することになる。
6000億ドル投資の波及効果とグローバルAI競争の行方
NVIDIA、AWS、AMDの3社の提携のほか、Google、Oracle、Salesforce、Uberといった米IT企業も、サウジアラビアとの間で総額800万ドル規模の協業・投資を計画しており、AI領域における米・サ連携の輪はさらに広がると考えられる。
これにより、サウジアラビアは新興国の中でも異例のAI先進国としての地位を築く可能性がある。
一方で、今回の動きは単なる経済的提携にとどまらない。米国にとっては中東との戦略的関係を再構築し、中国やEUとの技術競争で優位に立つための一手ともいえる。
特に、AI人材の育成と新市場の創出は、グローバルなイノベーションの鍵を握る重要な分野である。
このように、国家レベルの投資とグローバル企業の連携が相乗効果をもたらす中、AIの地政学的価値はさらに高まりつつある。日本企業にとっても、単なる技術輸入にとどまらない能動的な関与が求められる局面だろう。
※Omniverse:NVIDIAが開発する3D仮想世界の開発・運用プラットフォーム。デジタルツインやAIシミュレーションに活用される。